ボルダリングを始めてから2年ほど。
ルートクライミングに興味が出てきた。
ボルダリングの動画をYouTubeなどで探すと、リードクライミングの動画も多く検索候補に上がってくる。
それを見て、せっかくフリークライミングをやっているならリードクライミングなどのロープを使ったクライミングを体験してみるのもいいかもしれないと思った。
といってもリードクライミングには相方となる経験者、よくわからない器具などが多く必要な上、室内でやろうと思うと場所も限られてくる。
関西の場合、リード用のクライミングウォールを備えた設備はグラビティなんばかクラックス大阪ぐらいしかない。家に近い滋賀、京都にはない。
経験者による指導、用具、設備などが揃うタイミングが少なく、「行こうぜ」のお声がかかったとき、迷わず飛びついた。
まさかいきなり外の岩を登ることになるとはその時は考えていなかった。
この記事はまとめブログ風に書くと「初中級者ボルダラーが外岩ルートクライミングを体験したったwww」的な内容のものである。
……草を生やす余裕はなかった。マジで。
Q.外岩ルートクライミングに絶対必要なものは何?
A.経験豊富な外岩ルートクライミングのコーチ役。
ボルダリングはともかく、ルートクライミングはしっかりとしたコーチがいないと冗談でなく命が危ない。
どこかの山岳会に入って講習を受けるか、あるいはその他有償の講習を受けるしか方法がない。それか他人を教えることのできるレベルにある知り合いに教わるか。
自分の場合は最後のパターンだった。
ありがとうTさん。感謝してもし尽くせない。
教わることは山ほどあった。
ルートクライミングにおける基本的な心がけから、各種8の字結びから始まるロープワーク、ハーネスの付け方、ビレイデバイスの使い方、セルフビレイの方法と鉄則、クイックドローの扱い方、トップロープでの登り方、リードでの登り方、ビレイヤーのテクニックと心得……エトセトラエトセトラ。
ほぼ丸一日(8時間)岩場にいる間、半分以上は教わる時間に費やされた。
実際自分が登っていた時間は30分くらいだろうか。
とにかく教わることが多い。しっかり教わり、実践して確認しないと生死に関わる。
自分だけでなく他人も危ない。
この記事を書いている段階でまだ2回しか行っていないが、1回目も2回目も同じような感じだった。
それでもまだ教わりきれていないことが数多くある。
まだまだ先は長い。
室内でのフリークライミングとの違い
一番違いを感じたことが、持つところ・足場に使うところが触ってみないと・置いてみないとわからないことだ。
室内でのフリークライミングの場合は、ホールドという確実に「これを持て、これを足場に使え」とわかる目印がある。
外岩のボルダリングでも、ある程度は見当がつく。
そこを掴まないと、使わないと基本的にはクリアできない。
外岩でのルートクライミングの場合、それを探しながら進まないといけない。
一見ではほとんどわからない。下から見た想像なんて全くあてにならない。
次の動きを考えた一番都合のいい場所の手足の場所をいちいち触ってみて、置いてみて初めて分かる。
ジムならためらいなく使うだろうスローパーが、カチが、カンテがそこらじゅうにある。(初級者の挑む5.10ぐらいの課題なら)
悪いものを選んでしまうと、次の動きが制限される。体が安定して余裕が無いとロープをクイックドローに通すことができない。
良すぎてもルートから外れてしまうとダメだ。
最善の手足の置き場、最善のムーブをまさしく手探りで探していく。
そうやって選んだ手足の置き場、ムーブを信じて、次に進む。
それを十数回、数十分続ける。
瞬発力が多く求められるボルダリングとはまた違う。持久力とルートの選択力も欠かせない。
ルートを選択し、その選択に賭けるという意味で、ボルダリング以上に頭と精神力を使う行為だと感じた。
ずっと探し続ける訳にはいかない。体力が尽きる。
ある程度で妥協をして、勇気を出して思い切りの良いムーブを決めて、次の休めるところを探しに行く。
片手を離して腕を振って休める……ジムではトラバース以外では余興のようにやる動作が真に意味を持ってくる。
恐怖はもちろんある。
最初の数メートル、数ムーブが一番怖い。
それ以降はルートを探すことに夢中で恐怖を覚えている暇がない。
高度を、手足の信頼性を、体力の不安を恐れると体が強張ってうまく動かなくなってしまう。
恐怖を覚えたらすぐそれを振り払う。イケる。下ではビレイヤーが支えてくれている。選んだこの手足の置き場、ムーブは間違っていない。
いろんなものを信じて登る。
信じないと恐怖は拭えない。
恐怖を覚えては振り払って進む、その繰り返し。
頂上にたどり着いたときの達成感は凄まじい。
景色も綺麗だ。ちょうど紅葉のシーズンでよかった。
登ったところは滋賀県大津の千石岩。
眼下の紅葉に染まった山、大津の街、琵琶湖を拝んだときの感動はなかなか忘れられない。
室内でのフリークライミングとの共通点
室内ボルダリングで体得したムーブは大抵有用だ。これは外岩でのボルダリングと同じ。
ダイアゴナルにハイステップ、ヒールフックにトゥフック。
むしろこれほど綺麗に決まって体が思い通りに動いてくれるのか!と思うくらいに気持ちがよく決まることがあって感動した。
室内でのボルダリングはこのためのトレーニングなんだな、と思ったほど。
(実際自分のホームジムは外岩派の人が多く、ジムは練習場所として扱われている)
室内での長物課題、トラバースはやっておいてよかった。
日頃からトラバースで追い込んでないと多分大抵のルートの途中で体力が尽きたと思う。
ホールド数にすると20個は確実ある。探す時間も含めると体感的には30~40個ぐらいのホールドを使った長物課題に感じた。ルートにもよるだろうけれど。
まとめと、興味を持った人へ
外岩ルートクライミングはとんでもなくエキサイティングだった。
登山が好きで、外岩ボルダリングが好きなら一回やればハマることは間違いない。
自分は次の週末にはハーネスとクイックドローを買っていた。
(ちょうどセールだったというのもある)
ただ、ロープやビレイなどの準備に手間がかかる。
まどろっこしいことが嫌いな人、すぐ登りたい、何度もトライしたいような人は向いていないかもしれない。
外岩のルートクライミングを始めるハードルはかなり高い。
一人で始めることは難しい。ビレイパートナーになってくれるクライミング仲間も欠かせない。
講習を受けて、あるいは知り合いに教わって始めよう!と思う人は下記ぐらいの実力を身に着けてから行ったほうがより楽しめると思う。
- 4級くらいの課題をクリアできる
- やや傾斜した壁で30手ほどのトラバースをクリアできる
あと山岳保険には忘れずに入っておこう。