ムイ

もはやクライミング日記

賀東招二『甘城ブリリアントパーク』の感想

 随分と落ち着いた立ち上がり、という印象です。

これは一発当てて、大作を書ききったベテランにしか許されないやり方だと感じます。

実績のない新人には許可されない立ち上げ方でしょう。

(そう考えると、ライトノベル業界は利益優先で「静かな立ち上がりで、後半盛り上がる」大作を書く作者を軽視する傾向にあるのかもしれません)

文体はこなれていて安心感があります。

個人的に残念だったのが、作者がアミューズメントパークに関する知識が深くないということです。深いのかもしれませんが、それを感じさせる部分があまりありません。

作者の前作、フルメタル・パニックの魅力といえばやはりミリタリー。そこには作者の空想を含む造詣の深いミリタリー、機械工学知識が散りばめられており、作品を魅力的なものに仕上げていました。

一方で今回は深い知識、設定からの援護がないです。

作者の作品の魅力を知っているだけあって、肩透かしを食らった気持ちになります。

できれば、あざの耕平ばりに知識を深めてから望んでほしいものです。

(流行の問題で、設定が深いものは受けが悪く利益に繋がらない、という編集者の指針があるのかもしれませんが)

評価:☆☆☆★★