9月19-22日までの4連休、シルバーウィーク。
晴・雨・晴・晴となった日程、その後半の2日間。
小川山でリード、トラッド、そしてマルチピッチを楽しんできた。
これはその一日目の内容。長いので注意。
前置き
せっかくの4連休にどこか行かないともったいない。
トポを買っただけでまだ訪れていない岩場がいくつかある。
まだ残暑も厳しいので、標高が高くて涼しめな小川山か瑞牆に単独でボルダリングに行くかな……と目論んでいたところ。
リード仲間から「小川山にリード、トラッド、マルチピッチしに行きませんか?」というお誘いがあった。
渡りに船だ。交通費が割り勘になって嬉しい。
ちょうどトラッドの魅力がわかり始めていて、マルチピッチにも興味を持ち始めていたところだった。
迷いなく「行きましょう」と返事した。
一番の心配は天気だった。この季節は日本をめぐる高気圧とその結果生じる秋雨前線で目まぐるしく天気が入れ替わる。
祈りは捨て、諦観の境地で毎日天気予報を眺めていたら、見事に旅程と晴れの日が重なった。最高だな!
今回の狙いの課題は2つほど。それ以外はあまり考えていなかった。
自分にとって小川山は遠すぎて、打ち込む課題は作りにくい。
それよりも、まだ経験していないことを、小川山でしかできないようなことをしよう、という気持ちで向かった。
具体的にはトラッドとか、マルチピッチとか。
駐車場が混むことを考えて、前日の夜に出発。
4時頃に到着。廻り目平キャンプ場の麓の道にはすでに「満車」の立て看板が立っていた。
しかし、これは細かい状況を反映しているものではないことは分かっていた。
無視して駐車場まで行ったところ、案の定10台~20台くらいの空きがあった。
後述するけれど、そもそも駐車場の心配をする必要はなかった。
天気が微妙な状態でテントを貼るのは嫌だったので、今回は金峰山荘に宿泊の予約を入れていた。
そして山荘の宿泊者には専用の駐車スペースがあり、これは2/3くらいしか埋まっていなかった。
駐車して、毛布をかぶって車中泊。
7時に準備完了、アプローチを開始した。
レギュラー 5.10c
自分の狙いの課題の一つ。前回の小川山ツアー(講習)では触り損ねていた課題だ。
パートナーの狙いがマラ岩の隣の妹岩にあるカサブランカ 5.10aなのも都合が良い。
当初の予定ではより混みやすいカサブランカの方に最初に取り付く予定だったのだけれど、7時半の段階ですでに1パーティー5人待ちの状態になっていた。
かなり早く出たのに……上には上がいるものだ。
100岩に記載されているとおり、オンサイトを狙う。もちろんマスタースタイルだ。
山には薄っすらと靄がかかっており、気温が低い。
幸いこちらには誰も取り付いていなかった。
さーてやるぞーと準備を開始したところ、パートナーが車にハーネスを忘れていたことが発覚。慌てて取りに行くのをぼんやりと見送った。
まさか家に忘れてきたなんてことは……という心配はさすがに杞憂だった。幸い待つ間に他のパーティーが来ることもなく、挑戦開始。
出だしにビビりながらも、コツコツと高度を上げていく。迷ったら無駄に突っ込まない。休めるところ考えられるところでしっかり待つ。ムーブと覚悟が決まったら進む。
なんのためにジムで週25本くらい登ってるんだ!このためのスタミナ作りだろ!
ホールドが冷たく、手がかじかんでパンプしやすい。途中諦め気味になりながらも、辛抱強く気合いを振り絞って手を進めた。
上部のスラブに入ると手が休まって一段落。あとは簡単なスラブ……と思いきや、終了点間際のスラブが一番の難関だった。顕著なホールドが見当たらず、悩みまくり、一度突っ込んでは戻った。
もうこれしかないだろ!と覚悟を決めてハイステップで乗り込み、立ち上がって悪めのホールドを取り。必死になって終了点にクリップした。
やったぜ!オンサイトだ!
これでようやくリード初級者になれたかな。
ツアー1本目は幸先の良い結果となった。
その後、最近ジムで知り合った仲間と合流。
レギュラーのビレイをしてたところ、3ピン目でたぐり落ちされた。グランドフォールにはならなかったものの、後ろの岩に頭をぶつけたようだった。
幸い大事に至らなかったものの……ヘルメットは大切だな!
届け手の平 5.10c
前回完登を逃した、マラ岩のスラブ課題。
ムーブは完璧に組み上がっている。さっと繋げてリベンジ完了するぞ!と思っていたのに。
核心の届け手の平!で足が滑って失敗……。何度かトライして上まで抜けきるも、核心部があまり安定しない。1本指ポケットの負荷が高く、突っ込んでいる人差し指が痛い。
今回クライミングシューズは使い込んだアナサジLVと、買ったばかりのASYM VCSを持ち込んでいた。
どちらもフラットソールなシューズ。前者は使い込んで柔らかめ、後者は硬くエッジ重視。
最初はアナサジLVで挑戦して失敗した。仲間がミウラーで完登したのを参考にエッジ重視のASYM VCSで挑んでみるも……結局また核心で失敗。しかもアナサジLVよりも安定感がないような感じだ。ちょっと硬すぎて、自分がスラブに使うには辛いかもしれない。
何度も核心に挑戦し、人差し指の痛みが強くなってきたので諦めた。これ以上やると今後の活動に支障が出そうだ。敗退。
ちっくしょー……。
カサブランカ 5.10a
あれから待ちが増えたりして、10時頃にようやく順番が回ってきた。
仲間はリードでカムを決めながらトライ。フラッシュトライは惜しくも失敗。
前回は仲間のジャミンググローブを借りて挑んだけれど、今回はテーピングをして行くことにした。
前半はジャミングをあまり使わず、周りのホールドを使いフェース登りでササッと抜けきる。
後半から本格的にジャミング開始。
うん。決まる。バチバチに決まる。というか、決まる場所をちゃんと選ぶ余裕がある。
前回失敗した右のクラックへの切り替えも楽々。余裕で上まで登りきることができた。
進歩を感じる。
このツアーから帰る途中にふと思ったのだけれど、リードやトラッドはいかに肉体的、精神的余裕を捻出するか、というものが本質なのかもしれない。
少なくとも自分にとってはこれが一番しっくり来る。
余裕ができてこそ確実なムーブ、カムを決める事ができる。余裕がないとたとえ進んでもいずれ行き詰まり、危険を犯すことになる。
スタミナと経験と直感で余裕を作り出して、安全を確保して手を進めるのだ。
次はこれをリードでやりたいね。
龍の子太郎 5.9(1Pのみ)
昼頃になるとマラ岩妹岩周辺は人が増え、何のルートに挑むか悩み始めた。
ちょっとショートルートをやりたいなと思っていたので、上にある姉岩まで偵察に行った。
概ね空いていたので卒業試験 5.10bあたりでもやってみるかなと思ったけど。
せっかくなのでもっとトラッド、クラックに慣れ親しもうと思い、ややワイドめなクラックの龍の子太郎 5.9に挑戦することにした。
2ピッチのルートだけれど、とりあえず1ピッチのみ、トップロープで。
見た目はフレアした広いクラックだけれど、奥が狭く、ハンドジャムがよく決まる。
後半は周囲のアドバイスを聞いてレイバックでスイっと抜けた。
クラック終わりのマントルが核心っぽいけど、うまく重心を右に移して左足のジャムが決まれば安定する。無事完登。
クラック、楽しいね!
龍の子太郎 5.9→5.8(2P)
仲間がカサブランカ 5.10aに再挑戦の順番を待つも、まだ時間がかかりそうなので明日のマルチピッチの予習を兼ねて2P登りきってみることにした。
自分はセカンド。
2ピッチ目がほとんどやったことのないワイドクラックだけれど……多分大丈夫だろ。
1ピッチ目はさっきの繰り返しなので全く問題なし。
問題の2ピッチ目だけど、下から見ていたのよりもずっと長い。リードしているパートナーがかなり四苦八苦していた。
長時間のぶら下がりビレイで足腰が痛くなった。
そして自分の挑戦開始。
「そんなに苦労するものかな……レイバックとかでごまかせるだろ……」という考えは甘かった。甘すぎた。
半身を入れるには少し狭く、ジャムを効かせるには広いオフウィドゥスな空間が続く。時折奥にハンドジャム、フィストが決まったり決まらなかったり。その不規則さ、選択肢の多さが悩ましい。
なんじゃこりゃ。今まで経験したことないぞ……。
でも、色々クラックを触ってきた甲斐があったらしい。膝、肘でうまく決めて体を固定、手を進めて良い場所探り、ぐいっと体を上げる。それを繰り返した。
ヒイヒイ言いながら何とか完登。
これをカムを決めながら進むのはすごいな……今の自分では全く余裕を捻出できない。
間違って少し下の木でピッチを切ってしまい、次は自分がリードしてスラブを抜けて3Pで終了した。
マルチピッチの予習には最適だったかもしれない。
ここでトラブルが発生。
終了点につけたビレイデバイスの安全環カラビナの環が回らない。必死になって回すも駄目。というかビレイグローブが滑る。畜生、ちゃんとしたビレイグローブを使うんだった……。
ヤバい。ここでデバイスを失くすと明日マルチピッチができなくなる。泣きそうになった。
結局パートナーの気合いのこもった処理で無事回ってくれた。
問題のカラビナはお蔵入りにした。
このルートは懸垂下降ではなく、下降路を下って降りるということになっていたので下降路を探すも、迷った。
何とか見つかった下降路自体も松の枯れ葉が多くクライミングシューズではよく滑る。
なかなかハードなルートだった。
最後、仲間が無事カサブランカ5.10aを登り切るのを見届けて、17時半に下山した。
金峰山荘に宿泊
ちょっと書いたけど、今回は天候が不安でテント泊が面倒そうなので山荘に泊まることにした。
そもそもテントを持っていない。前回借りた仲間は快く貸してくれるだろうけれど……厚かましすぎると思って遠慮した。
山荘宿泊の最大のメリットは、駐車場が常に確保されていることだろう。
朝食は7時、夕食18時に固定されており、食堂にその時間に用意されている。
誰かが「山荘の食事が美味しい!」と言っていたのでちょっと期待していたけれど、これは廻り目平キャンプ場のもっと下にある岩根山荘のことだったらしい。
金峰山荘の食事については……ノーコメントで。
部屋は特に不満はなかったものの、しばらくすると鼻がムズムズし始めた。自分はダストアレルギーの鼻炎持ちなのだ。
早めにマスクをしたおかげで問題なかった。
浴場は比較的新しいらしく、設備が綺麗でお湯もたっぷり出ており、空いていて快適だった。
部屋の中では特にやることもなく、疲れていたので21時過ぎに早々に眠りについた。
二日目に続く。