曇り時々晴れ。風がなく乾燥した日。
晩秋の空気の漂う恵那笠置山で、外岩ボルダリングを楽しんできた。
前置き
平日のふとしたタイミングで、先週末に挑んだ芹谷屏風岩のブロークンフィンガー 5.11c/dの改善点や試したいことをいくつも思い浮かべていた。
これはたぶん皇帝ペンギン 初段のリベンジをしに行くつもりだな?
この機を逃して仲間が登ってしまうと、難民化(一人未完登で取り残されて、一緒に登る人がいなくなってしまうこと)必至。
うーん……こりゃこっちを取るしかねえ。
それに、皇帝ペンギン 初段はもう完登できる予感しかなかった。
行きしの車内で「今日は皇帝ペンギンを速攻で落としましょうねー」という話をしたらどうにも微妙な空気が漂った。
「あれは入れ込んだらヤバい女だよ」「有り金全部取られて終わるかもしれん」「ハマったら終わる」「腹が立つ」などなど。皇帝ペンギンは魔性の女扱いとなっていた。
そんな中、自分だけが「いやいやそんなことないっすよー。あの子悪くないっす。今日で絶対落とせるんで」と気楽なテンションになっていた。
……この後起きることも知らずに。
途中のSAでは日の出一緒に虹(それとも彩雲か?)を見ることが出来た。
果たしてどちらなのか。祝杯を上げるためのドリンクを買って荷物に忍ばせた。
皇帝ペンギン 初段
ムーブはすでに完成している。あとはタイミングだけ。
しかし、とりあえず後半のリップ取りは確認しておく。「あれ?こんなに左足高かったっけ?」などとイメージトレーニングとの違いに戸惑いつつも、徐々に距離が出て4回目くらいでリップを取ることが出来た。
よし!後は繋ぐだけだな!もうお前は見切った!
……前回完璧に仕上げたはずの前半部で躓く。
妙に感覚が違う。核心を掴んだはずの相手が、手からすり抜けていく。
魔性の女過ぎる。LINEを送っても既読スルーなくらいの門前払い。マジかよ。
挙げ句、右カチがすっぽ抜けて盛大に猫パンした。爪と指の間まで裂けた。間男扱いでぶん殴られた気分。マジかよ。
前回は雨の後でも持ち感はちょうどよかった。
それが今日はつるつると滑る。乾燥しすぎているのか。指に吐息を当てて湿らさないと保持感が出てこなかった。
というか、寒さが問題だった。気温は5℃。先週よりも4℃ほど最高気温が下がっており、一応秋仕様の装備で来たのだけれど……自分が寒さに弱いこと、まだ体が秋冬仕様に仕上がっていないことをすっかり忘れてた。
体が冷えて動きがぎこちない。レストして次のトライのタイミングを見計らうと体が冷える。魔性を超えて魔氷の女である。ツンデレのツンがキツすぎて心身ともに凍えるわ。
結局リップ取りまで挑めたのはたったの2回。2時間ほどでリベンジ組全員がやる気を失っていた。こりゃあかん。
敗退。大敗退。
しばらく顔も見たくないぜ。(嘘。連絡があったらすぐ会いに行くぜ。)
ジェンガ 初段
3年ほど前にちょっと触った課題。無論ムーブは完全に忘れていた。
スタート周辺はニーバーを決めて取るのが主流っぽいのだけれど、ニーバーの感覚を掴むのが面倒そうなので左手カチを出して右ヒールで乗り込んで取るムーブを使った。
ほんの少し負荷があるけど無視できるレベル。
以前は確か、この後のハイアンダーなカチを取るのに苦労してた覚えが……。
しかし、これはやればやるほど精度が上がっていき、負荷が減っていった。体のどこがどううまく使えるようになっているのかわからないが、とにかくどんどん楽になる。
人によってはこれがキツいようで、左手の少し右にあるピンチ気味なアンダーを取りに行くムーブが採用されているようだった。
試しにやってみたけど、負荷的には確かに少し楽かもしれない。しかしその後の左面へ手を出すのが厳しいので不採用。個人的にはそこが核心だった。
そして取った後も厳しい。後半パートの4級が案外辛く、ヨレる。
早めにお昼を取って長期戦で挑んだ。
今シーズン初のお湯投入。あたりをニンニク臭くしながら食べたが、やはり寒い。
積み木岩はずっと日陰で、気温は常に8℃前後だった。足先が、体が冷える。
後半パートも何度か触って体に慣らし、繋ぎにかかるも……後半のガバで指が開き始めてヨレ敗退となった。
うーん、悔しい。これはうまくやれば出来たはず。
最近、持ち前の登攀力を完登という成果にうまく繋げられていないことをひしひしと感じる。
もちろんそれを含めての「登攀力」なのだけれど……フィジカルとテクニックが十分なのに、ポカミスをしたり、レスト不足だったり、タイミングを逃したり、無駄撃ちしてヨレたり。
本気トライでメンタル、集中力、持てる力をすべて出し切るスキルが欠けている。
ここが今の最大の課題だなあ。
牡丹 2級
ペンギン岩から積み木岩に向かう途中で見て「カッコいい岩だなー」と思わず立ち止まってしまう岩だった。
トポを見たところ、good x 2がついた牡丹 2級があるという。
もうヨレきっているので、最後に触ってみることに。
……ん?これは……ヨレている中やるにはちょっとハイボルじゃない?
上部の抜けとスラブの様子がわからない。
まあ、でも、とりあえず触るか!とトライ開始。
前半にあるピンチが核心だろうか。
これの保持感が悪く、ムーブが起こしにくい。ここ以外はガバだらけなので問題なし!
自分は得意の体を丸めて足を高めにヒールを掛けて負荷をごまかして手を進めた。
念のため、バラして上部を確認。
あ、高い。しかしどこもガバなので問題なし。
さーて繋ぐぞーと挑むも、完全に体が死んでいた。
2, 3ムーブをこなすだけで、笑っちゃうくらい体が上がらなくなる。
全員口を開くたびに「体が死んだ」的なことしか言えなくなった。
敗退。
下山
手のあちこちに作った傷が痛む。水が染みる。
こんなに生傷を作ったのは久しぶりだ。
痛い痛いと言いながら手を洗い、コンビニの駐車場でうんこ座りしながら傷口にメモAを塗り込んだり絆創膏を貼ったりした。
腹いせにコンビニチキンとつくね串を食べ、祝杯のためのつもりだったドリンクを飲み。
妙に膨れた腹を抱えて帰宅した。
シャワーを浴びて傷の手当に20分ほどかかった……。ああ、憂鬱憂鬱。
今回の最大の敗因は防寒だったと思われる。もっと厚着をしていくべきだった。
ボルダリングの宿題が溜まっていってリードに取り組む余裕が奪われていく……
まあ、その場その場で楽しくやるかな。