薄曇り後晴れ。風は強め。初冬にしては暖かい日。
先週の外岩ボルダリングの帰り際に仲間から「来週は四国、仁淀川に行って魔王 二段のリベンジする予定だから」と話を聞いていたが……参加意欲がほんの少し低迷していた。
先週で恵那笠置山でのボルダリングの宿題が一段落ついたので、またリードに挑戦していきたいという気持ちが湧き上がっていた。また、地元の岩場にも宿題がいくつかある。遠方に行くより、まずは近場で土台をしっかり固めたほうが良いのではないか?そもそも狙いは二段だ。その上ハイボールだ。自分にとってはキツい。そして仁淀川に行くのは時間もかかるし疲れる……などなど。
……でも、せっかく遠方の有名な岩場に行くチャンスを自分で潰す必要はない。限られた機会は有効に使わないと。というわけで返事はイエス。
服装をどうするか、悩んだ。
1ヶ月前の訪問時は凄まじく暑かった。
その時の近くのアメダスデータと天気予報などを色々検討。結局、最防寒装備一歩手前を選択した。
朝は寒いし、風が強いという予報もある。薄着して寒かったら取り返しがつかないけれど、もし暑ければ脱げば良い。荷物には薄着の着替えを入れておいた。
……結果的にこの服装は当たりだった。
少し暑いくらいだったけれど、自分にとってはそれぐらいが一番体が動く。
朝の2時に出発。
攻略に不安なレベルのまま、6時間かけて南西に住まう魔王の元へ。
週末の予定 pic.twitter.com/PhgVCzXdaP
— 心がdame (@kuramiya2) 2020年12月8日
魔王 二段
8時に到着。岩場には誰も居なかった。(そしてそれ以降も誰にも会わなかった)
相変わらず見栄えの良いでかい岩だ。堂々とした佇まい。魔王の名前に相応しい。
前回来た際に後半部はある程度触っていたので、アップを兼ねてルーフ抜けの大きな斜めガバからスタートする。
仲間のムーブを参考に、手順を修正。より見栄えの良い抜けである真ん中抜けを目指すムーブを構築。
後半で迷ったらヤバい、ということで一度上まで抜けきった。
自分に手順の習熟と高度感への慣れというバフを、そして魔王には弱点をあらわにするというデバフを丁寧にかけていく。
続いてルーフ、下部の攻略。
ルーフの前半部は前回登った魔空 1級とある程度共通部分があるのでOK。
問題は、やや遠目の左のスローパー取りから後半のスタート部の大きな斜めガバまでの渡り。ここは未攻略。
遠目のスローパー取りは右足をうまく踏んで推進力を出すことで解決。
そして足運び、トゥフック、そして最後に左手のガバへの寄せ。
この寄せのムーブに少し癖があり難しい。トゥを掛けながらうまく体に反動をつけて左手を届かせるよう必要がある。
体を縮こめてロックすると駄目。何度も落ちて、ようやく取れるようになった。
これで本体への攻撃が通るぞ。
そして繋ぎ、本気トライ開始。
最近良く考えるのは「どうやって本気トライの心身を整えて、チャンスをものにするか」。
Twitterで色んな人に聞いたりもした。
最近、本気トライ前のメンタル、集中力の整え方やルーチンをいろいろ試しているのだけどイマイチしっくりくるものがない
— 心がdame (@kuramiya2) 2020年12月10日
フォロワーの人で「自分はこれやってるよ」「こういう気持ちでトライ開始してるよ」とかルーチンがあったら教えてください🙏
とりあえず気合い入れる系よりもリラックス系の意見が多かったので、それを参考に何気ない流れでトライに挑む、気負わないことを意識してみた。
完登は考えず、一手目付近だけに集中する。
何度か左手の寄せに失敗した後、ようやく取れた!このチャンスはもう逃せない!
でも冷静に……後半は前半のルーフ部のヨレが来る……が、日頃のリードで鍛えたスタミナとレスト能力が生きるところ。
癖でチョークバッグに手を突っ込む動作をしてしまったり。
抜けは右に逃げずに頂上から。
マントルはじっくりとホールドを探して、保持感を確認してから体を上げきった。
……やった!初めての二段完登だ!魔王討伐完了!悪は滅びた!
岩の上でフラフラと小躍りした。
……まあ、高度、恐怖、スタミナ核心で負荷的には優しめの気がする。
しかしそれよりも、この弾丸遠征でしっかりとした成果を出せたのが嬉しかった。
魔宮 初段
魔空の岩の右からトラバースし、魔空 1級の後半部につなげる課題。
自分の完登待ちをしている中、始まっていたセッションに参加。
……悪い。コンクリの崖から落ちそうで怖い。
まだエリア移動して登りたい課題もあるので、パワーを温存する。早々にリタイアした。
仲間の一人が完登したけれど、こちらのほうが二段に相応しいのでは?と言っていた。
11時になると川辺に日が差し始めた。移動開始。
柳谷 発電所エリア アプローチ失敗
次に目指すは名課題の揃った発電所エリア。
仲間の狙いは初陣 二段。その他同じ岩に1級などもあるらしく自分も楽しめそう。
期待を胸に車を進めたのだけれど……。
えぇ……立入禁止……。
結構前のことなので、これが解除されていると期待していたのだけれど。
近くに下降路もなく、川沿いにアプローチするのも辛そうなので諦めた。
後で家に帰って何気なくGoogleMapで道を見てみたら。
こりゃひどい崖崩れだ。修復に時間がかかるのも納得。
USUMMA 初段
次の候補であるUSUMMA(ウスンマ) 初段があり、その周りに岩の密集した美川キャニオンエリアへ移動。
駐車スペースに戸惑いそこそこ時間を浪費してしまった。
アプローチも要注意。
これを知っておかないと絶対に間違える。
峡谷に到着したら……もう、ドデカイ岩だらけ。
フューチャーエリアや魔空エリアでビビってる場合じゃないレベル。
岩場での移動も悪い!うっかり足を滑らせると怪我は避けられない。
ビビった仲間に発破をかけながら、怖いアプローチをこなしてUSUMMA 初段の岩に到着。
ガチャガチャとしたホールドの多い、被った課題。
下地はまっ平らな岩なのでマットは敷きやすい。が、その岩棚から足を踏み外すと多分死ぬ。
ご飯を食べて一息ついて、挑戦開始。
この後がなかなか取れない。左手を出すのか?右手を出すのか?
みんなが左手出しを粘る中、一人右手出しを模索するが……結局うまく行かず。
そこからさらに手を進めた仲間もあまりのホールドなさ、悪さにリタイアした。
結局みんな諦めて敗退した。
USUMMA 初段には欠損情報がいくつかある。
さらに、帰りにTwitter経由で「リップまで崩壊が進んでおり、安全性を考慮して登攀自粛傾向にある」という情報を知った。
途中で諦めて正解だった。
岩場の最新の情報をしっかりと入手してから行かないと、とんでもないことになるな……。
これは肝に銘じておきたい。
無名フェース 1級
時刻はすでに15時を回り、今からエリア移動するのは厳しい時間。
周辺で何か面白い課題はないかと探した結果、目をつけたのがこれ。
スラッとしたきれいなフェース。
要所要所にカチがあり、それがうまくつながっている。
スタートの足が悪く、苦戦。しかし仲間の見せてくれた左足を良いところまで上げる方法で完全に安定した。これはいけるな。
2、3度手順やスタンスを間違えて失敗。気負わず、落ち着いて……。
無事完登できた。
気持ちよく登れる良い課題だ。
帰宅、振り返り
帰りはナビに従って北上、松山ICから高速に乗った。美川キャニオンエリアがちょうど北回り南回りの中間点になるようだ。
途中、与島で与島ラーメンを食べた。あっさり魚介にごま油が効いてて、さっぱりして美味い。
この遠征に参加してよかった。
ここ最近ずっと課題にしてきた「心身を整えてトライ、チャンスをものにする」は少しずつ形になってきたような気がする。
……まだまだ不安定で、ふとした瞬間に忘れてしまう予感もあるけど。
初めての二段を登れたのは嬉しいけれど、まだまだ納得してない。
次は「自分が納得できる二段」を登りたいな。
魔王討伐が終わっても、物語はまだまだ続く。