前書き
もともとこの記事のタイトルは「ゆく岩くる岩」にする予定だった。
それがこんなタイトルになったのは、まあ、タイトルの通りである。
ただ後述しているけれど登るルートとして崩壊したわけじゃない。たぶんグレードの変化もなく、問題なく登れると思われる。
登ってないのでなんとも言えないけれど。
大晦日に時間があったのでちょっと一人でボルダーでも行くか、と思っていたところ仲間から連絡があり、リードに行こうということになり。
南面で冬でも暖かい大鳥居の岩場に行くことになった。
今まで路肩に車を停めていたけれど、大戸川ダムの工事のためだろうか、路肩がその作業に関するスペースの入り口に変わっていた。
さらに、このもうちょっと上の方にある広い路肩も青いフェンスが張られていて進入禁止となっていた。
現状、近場で停められる場所は橋の下しかない。最大で3~4台くらいだろうか。
ダム工事が終わるまでは乗り合わせてきたほうが良さそうだ。
当日の最高気温は10℃。概ね晴れ。
10時についたら気温計は2℃だった。そこそこ風もある。まあまあ寒い。
でも岩場に着いたら日がよく当たり暖かい。途中でタイツなど肌着を一枚脱いだくらいだ。たまに吹く風がアクセントになって心地よかった。
最高気温10℃くらいで、晴れ。たぶんこれがこの岩場の最高のコンディションだと思う。
少し前にある開拓クライマーがコブラツイスト 5.10bの左隣に打ったというボルトはまだ残っていた。
これはいろいろあって地元の開拓関係者と話し合った末、打った人が撤去することが決まったと聞いたけれど……まだボルトは残っていた。
本当に撤去するのかしらん?
アップとか
この岩場に来たら必ず取り付くのは四度目の青春 5.10a。
スラブ、フェースの良さがギュッと詰め込まれた本当に良いルートだと思う。★★★は納得の評価。
久しぶりに登ってつくづくそう感じた。
関西で花崗岩のルートでおすすめは?と言われた個人的にこいつを推したい。
核心部のガバフレークは持つとわずかにたわむ気配がある。
そのうち欠けそうだなーと思いつつ登った。
まさか、本当にそういうことが起こるとは、このときは全く思ってなかった。
ブラインドではないタッチ
目当てのルート。前に来た際に登れていなかったブラインドタッチ 5.11cに早速取り付く。
前に触ったのっていつだっけ……?
1年以上前か。まあ忘れるわ。
1本目
とりあえず、様子見で……たぶん後半からテンション祭りになるだろうと思いながら登攀開始。
一番の悩みどころはスラブからフェースに入るところの足運び、というかフットホールドやポジション選びなのだけれど、何とかこなすことが出来た。
以前は悩んでそこで止まりまくって、手順足順を完璧にしなきゃ解決できなかったはずなのだけれど。成長してるってことなのかしらん?
その後でヨレてテンション、そして核心の飛び出し部でテンション。
核心部でのスタンスを忘れている。
左に足を張るんだったか、どうだったか……?
結局張らずにやるのが正解。右足を右に出してバランスを取って、スイっと立ち上がり倒れ込むようにして左手を出せば届く。
……別にブラインドでも何でもないんだよな……ブラインド要素はどこ……?
もしかすると初登時は異なるムーブで解決されたのかもしれない。
2本目
暑かったので服を1枚脱いだ。
微妙に自信がないまま開始。
下部は迷いつつも進み、フェースの入り口でしっかりレスト&チョークアップ。
そして核心も上手く決まり、完登できた。ヨシ。
ここの終了点には残置カラビナがないがラペルリングはある。なので結び替えで降りた。
結び替え、久しぶりにした気がする。(いつも同じこと言ってる気がする)
ホールド崩壊
少し休憩を入れて、もう一つの目当ての匠の技 5.12aに挑戦開始。
1ピン目はプリクリップで。木にセルフビレイを取って、右隣と棚から腕を伸ばして掛ける。
慣れたらプリクリなしでもいけるのかもしれないけれど……高さがあっていやーキツイっす。
とりあえず1ピン目付近の核心らしいところで詰まった。
いくつかホールドの選択肢もあるのだけれど、上手くバランスを保てない。左に足を張りたい、でも良いところがない。
いろいろ悩んで試した末、一旦降りた。
ホールド崩壊、パートナーの負傷
パートナーに交代してビレイをしていて、4ピン目の上に行ったところでそれは起こった。
クライマーが大げさに落ちて、それと一緒に岩や砂が散らばって落ちてくるのが見えた。
昔、隣のルートを登った際に見ていたので、そこら辺がそれほど苦労はしない、要所にガバの多いスラブセクションなことは知っていたのであまり注意はしていなかった。
自分の左右をこぶし3個分くらいの大きさの岩が2個ほど通り過ぎてようやく起きたことがわかった。ホールドが崩壊したのだ。
上を見て飛んできた岩を避けるなんて器用さや反射神経はない。そもそもビレイ中だし大げさには動けない。
ヘルメットはしているし、上を見たら逆に顔が危ない。
腕で顔をカバーして落ちてきた残りの小石やらを耐えた。
デカい岩が当たらなかったのは運が良かったと思う。
クライマーとやり取りして、動けそうなのでロワーダウン。
幸いクライマーは手足などに負傷はなし。ただし頭を負傷して血が出ていた。
頭部負傷について調べたり、レスキューに詳しいクライマーに連絡を取ったりして、タオルで頭部の圧迫止血を開始。
止血処置自体は本人ができるようなのでとりあえず寝てもらい、靴を脱がせたり服をかぶせたりした。
ひとまず止血と様子見で30分。これで意識障害や手足のしびれなどが出始めたらレスキューを呼ぶしかない。
アプローチはザレ場が多いし、パートナーは体格的にも体重的にも自分より大きく重い。
背負って降りるのは二次災害の恐れがある。これ以上のリスクは厳しい。
今は落ち着くまで待つしかない。
……まあ、こういうときは自分がやれることをやるしかないよな。
ここでレスキューを呼ぶことになって、すぐ撤収に移れないのはよろしくない。
ということで後片付けを始めた。
崩壊部分の確認
大鳥居の岩場は左側から上まで回り込める、という話を聞いて覗きに行った。
左側のルートの終了点までしか行けないと思っていたので、下見で覗きに行って最上部まで行けることを確認。
残置回収と様子見を兼ねてロープを持って上がって懸垂下降を開始。
崩壊が起きた部分。人の頭2つ分くらいのサイズがごそっと抜けている。
これがクライマーの頭に当たったのだろう。
欠けた断面を見るとまともにくっついていたのは右端だけだったらしい。
いつ欠けてもおかしくない状態だったのかな。
そしてこれを外見から判別するのはまあ無理だろう。
落ちてきた岩の一部。半分くらい?
残りは落下中にバラバラになってしまったみたいだ。
自分はこのルートをここまで登ったことがないので、どんなホールドがついていたのか詳しく知らない。
パートナーからはサイドが開いたガバという話を聞いた。それを掴みにいったらまるごと抜けた、ということらしい。
がバが取れてガバができてる。
ガバであるのならパッと見た感じ、ルート自体の難易度の変化はなさそうだった。
崩壊後のルート。下からだと変化はわからない。
撤収
45分くらい安静にして、特に意識障害や手足のしびれがないということを確認して、まず自分の荷物を下ろしに行った。二人分の荷物を背負うのが辛そうだったので。確実さや身軽さを取った。
その間パートナーには彼自身の荷物のパッキングをお願いした。
アプローチを往復。その後でパートナーの荷物を背負って二人で下山した。
麓でしばらく休んだ後、パートナーを救急に連れて行った。
振り返り
ここらへんの花崗岩は特に脆いので、ヤバそうなホールドは慎重に、リスクを考慮しながら登る、くらいしか取れる手段がない。
ただ見直すところも多かった。
クライマーもヘルメットを装着する
パートナーはビレイ中はヘルメットを着けるけれど、登ってる最中はヘルメットを付けていなかった。被っていたのはニット帽のみ。
クライミング中もヘルメットをつけていれば、怪我はだいぶマシだったかもしれない。
セルフレスキュー知識・技術の習得
万が一症状が悪化したり、ここがレスキューが呼べる場所でなかったらどうだっただろうか。
ロープやギアを使った人の救助方法などはあまり詳しくない。
これでクライマーの意識がなくなっていたら……と思うと。
うーん……。
岩棚が近くにあるのでそこまで下ろして、ロープを近くの木にくくりつけてビレイを解除。
その後でもう1本あるロープで上から懸垂下降して様子を確認して、そこで支点構築。
自分が懸垂下降で使ったロープでパートナーを上からのビレイでロワーダウン。そして自分も懸垂下降する……みたいな感じか?
あー、自分と意識のないパートナーをスリングなどを使って落ちないように上手く連結して背負う知識が自分にはない。
それが出来たらもうちょっとスムーズにできそうなのに。とりあえず結ぶ、くらいでやってしまいそうだ。
それに基本的な外傷に関する知識も乏しい。もし骨が折れてたらどうするか? 固定方法なんてまともに知らんぞ。
もっと身につけておかないと……。
というわけで2022年最後の岩登りはいろいろあった。
2023年もよろしくお願いします。