- 発端
- そもそも陽朔ってどこ?
- パスポート更新
- 航空券購入
- ビザ取得
- 荷物の準備
- 食事について
- クライミング用具
- スマホ回線について
- お金、電子決済について
- 近いはずだけど、実際のところ結構時間かかる
- 荷物が重い!
- いざ出発、往路
発端
普段通っているリードジムに今後1年間予定されているクライミング合宿がズラッと掲載されたのは、7月の頭の頃だったと思う。
中国、フィリピン、韓国、沖縄、台湾などなど。いつもは2~3ヶ月ほど前に掲示されるのが、合宿参加のお得意さんから言われて1年分をまとめて掲示したのだとか。
ジムの合宿には一度小川山で参加したことがある。それが初めての小川山でそれを通して小川山という岩場の雰囲気を掴めたところがあり、ためになる時間だった。
しかし海外かー……ハードルが高いなあとか思っていたら「中国の陽朔のクライミング合宿は、5.11~12台のスポートルートをメインに登ってる人ならすごくオススメです、ぜひどうぞ」とスタッフに勧められた。
しかし海外に行くほどの意欲も気力も実力もないので、「前向きに考えておきます」的な答えをして流していたら、どうやらいつも一緒に岩場に行っている仲間は乗り気らしい。
うーん、行ってみるか?ヨーロッパやアメリカよりも時間もお金もかからなさそうだし。自分一人だけならともかく知ってる仲間がいるなら心強いし。
とか、優柔不断な感じで、数日後、「とりあえず参加します」と返事をした。
合宿の定員は6名だったのが、1ヶ月も経たないうちに満員になっていた。マジか。人気だなあ。
参加者は全員一緒に登ったことのあるような面子だったので、アウェイ感ゼロである。アウェイなのは、国と岩場だけ。
まあ、だけといってもいろいろあるわけだが。
心は決まってないけれど、参加は決まった。
さて、準備を始めなければ……。
そもそも陽朔ってどこ?
陽朔がどこかというのをまともに把握したのは行く3週間くらい前だった気がする。
意識が低すぎる。
世界地図での場所の把握の仕方は比較的簡単。
台湾の台北の緯度と、海南島の経度の交わるところ、と覚えればいい。それを覚えてからは場所の把握に困ることはなくなった。
ちなみに「ようさく」で変換できるが、みんな「やんそう」と呼んでる。英語だと、Yangshuoなので正しい読み方はヤンシュオなのか。
陽朔は正しくは陽朔鎮という場所で、桂林市の一部である。そして桂林は広西省チワン族自治区にある。
ギリギリまで四川省だと勘違いしていた。恥ずかしい。
ジムスタッフにどんな場所かと尋ねると「中国の水墨画に描かれるような山々がある場所」だという。そして岩質は石灰岩。
航空写真で見てみると。
そこら中にボコボコとした山がある。これがすべて石灰岩の小山、岩塔だという。
こりゃすごい。無限に岸壁があるような場所だ。期待が膨らむ。
その期待を満たすためには、まあ、いろいろこなしていく必要があった。
パスポート更新
長らく海外旅行にも海外出張にも行っていなかったのでパスポートが切れていた。
なのでまずはパスポートの更新からしないといけない。
今はオンラインでできるらしいぞ、と入力していったら最後の最後で「オンライン申請ができるのは有効期限が残っている人のみです」と弾かれた。最初から弾いてくれ。
やはりパスポートセンターに直接足を運ぶ必要があるらしい。半休を使って取得。今後なにかあるかもなので10年用のパスポートを取った。
証明写真の撮影に1400円、収入証紙2000円、そして収入印紙14000円など出費あり。
海外旅行は金がかかるなあ。
航空券購入
滋賀から陽朔に行くには、関西国際空港→上海浦東国際空港→桂林両江国際空港→陽朔というルートで行く、と案内された。
航空チケットが安めなうちにと3か月前の8月頭に中国東方航空の指定の時間のチケットを購入。
しかし最初は往路、続いて往路復路ともに予約した便の時間が変わったりそもそもその便自体がなくなったりして右往左往したり。
インターネットから便を変更しようもののサイトの表示が中国語に切り替わるし不安だしで電話で変更手続きをお願いしたりした。いきなりトラブルじみたことが起きてビビるぜ。
航空券は片道30000円ほど。往復で60000円。
相場がよくわからないけれど、まあヨーロッパやアメリカに行くより安いはず。比較するものではないけど。
ビザ取得
2024年11月現在、日本から中国に観光に行く場合でもビザが必要になる。
ビザの申請は専用用紙に記入して、東京や大阪などにある中国ビザ申請センターに行き申請を行い、そしてそれを直接取りに行く必要がある。非常に面倒くさい。
そのために休みを取ってられないので代行業者を使った。
代行業者の指定する資料に記入をしてメールでやり取りすれば間違いがあった場合でも指摘してくれるので助かる。
ビザ申請には専用のフォーマットの白背景の写真が必要になり、確実を期すならフォトスタジオなどに撮ってもらうのが良い。しかしこれには最低でも2000円強くらいお金がかかるし時間もちょっと必要になる。
自分はパスポート更新時に証明写真機で写真を取った際、データダウンロードオプションを有効にしていた。
そのデータを中国ビザのフォーマットに変換してコンビニで印刷する方法を取った。これだと800円くらいで済むしフォトスタジオを探して訪問する必要もない。
実際ビザの申請をしたのは合宿の1ヶ月くらい前だったと思う。10月頭の、中国の大型連休前に代行申請をしたのでビザの申請が上手くいったかどうかの返事が遅くなり、ヒヤヒヤしたのを覚えている。
代行申請は郵送諸々込みで20000円強ほど。自分で訪問すると7500円くらいで済むらしいがそのための往復の交通費と休みを取って行くことを考えるとまあアリな選択肢だろう。
それにしても準備すること対応することが多くてしんどいぜ、というのを仲間と話をしたりした。
荷物の準備
合宿2週間ほど前に改めてその内容と持ち物などの確認。
桂林の年間の天気はこんな感じになっている。
桂林市 の気候、月別の気象、平均気温(中国) - Weather Spark
結構降水量が多く、暑い時期が多いので11月が一番コンディションが良いらしい。
ただ訪れるタイミング次第で雨が降り続いて寒かったり、晴れが続いて暑かったりと予想が難しいとか。
なので防寒着も用意し、雨対策もしっかりと……という話だったのだが、天気予報を見ていると晴れが続く。
この時期の陽朔は例年よりかなり暑く、晴れの日が続いていた。
雨の場合アプローチがぬかるんだりするので防水された靴を、とか寒い場合のためにダウンを、とかあったが結局いらないと見越して持っていかなかった。そしてそれが正解だった。
一応持っていった厚手のクライミング装備、フリースなどすら使うことがなかった。岩場にいる時、登るときは半袖。夜や移動時間などはソフトシェル一枚羽織るだけで十分。
幸運にも天候に恵まれたタイミングに訪問することができたのだと思う。まあ、ちょっと暑かったけれど。
その代わりよく乾燥していたので日本と同じ気温とはまた違う感じである。
晴れが続いた場合、乾燥して西の内陸部の方から砂塵が飛んでくる。
これは中国の乱開発やら大気汚染やらの影響もあるのかもしれない。でも、古来の山水画の霞具合にそっくりなので昔からずっと続いている姿に見える。
ただこの砂塵は目や気管支にはそれほどよろしくない。マスクや目薬、のど飴などはあったほうがいい。
中国にはコインランドリーというのがあまりないらしいので、洗濯用石鹸も持っていって洗濯をして部屋の中で干したりした。
晴れさえすれば乾燥するので、ホテルの窓を開けていればよく乾く。
あと、干すためにビニール紐と洗濯バサミを持っていった。こんなの出番ないだろ……とか思ってたけどガッツリ使った。
ホテルのアメニティのシャンプーやボディーソープの質はあんまり良くないので準備していったほうがいい。
トイレットペーパーの質も悪いよ、と言われて持っていったけれどそこまで悪いわけでもなかった。もっと質の悪いトイレ紙を自分は知っている。
案外自分はケツが強いのかもしれない。図太いともいう。ケツデカクライマー。
食事について
岩場で食べる昼飯、行動食については事前にある程度用意して行ったけれど結局現地で美味しいものが簡単に買えたので、無駄な荷物になった。
これは不要だったな……。中国の食べ物というものを警戒しすぎた。
ただ、胃腸が弱い事もあって胃腸薬、整腸剤は持っていった。
ジムで知り合いの海外によく出かける医者によると、旅行先で腹を下すのは腸の大腸菌のバランスが崩れるためだという。なので多めに整腸剤を飲めば良いとか。
自分は旅行をすると便秘になる方だけれど、それにも役立つ。
もちろん水道水を口にすることは避けて、ホテルに来た次の朝にすぐ5Lのミネラルウォーターを購入してそれで過ごしたり。
5Lのミネラルウォーターで10元(220円)くらいなので、安い。
幸い食あたり的な形で腹を下すことはなかった。その代わり、辛さでほんの少しだけお腹を壊したり。
陽朔の料理は青唐を使っているものが多いのだ。辛いものばかりということはないけれど、辛いものが比較的多い。
食べるものはどれも美味かった。人の多い食堂の出しているものはどれも美味しい気がする。正直食事が自分の口に合うかどうかが不安だったけれど完全な杞憂だった。
クライミング用具
ルートはどれも長め。どれも20m以上が基本で、物によっては35mを超える。なので60mロープ、あるいは70mロープがあるといい。
岩質は石灰岩で、ビビるほど磨かれてドン引きするくらい滑るフットホールドがあったりする。なので柔らかめなシューズがオススメなのかもしれない。
クイックドローは15本ほどあれば大丈夫。
自分はちょっと足りなかったので買い足したり。(最近やってるルートが長いものばかりで足りないことが多い、というのもあったが)
あと、終了点に残置カラビナは基本ない。
でもしっかりとしたラッペルリング付きの終了点となっている。なので結び替えのための安全環付きカラビナがあるといい。
チョークは多めに持っていったほうがいいのかも。ツルツル過ぎてヌメリだすと消耗が激しいので。
自分が普段使っているリュックはやけにものの入る36L。
80mロープ、クライミングシューズ2足、クイックドローを多め、カッパ、水や食料など入れても入るのか……新しく買うか?いや、このためにリュックとか買うのもなーとかいろいろ悩みながら試しにパッキングしたらギリギリ入った。
すげえなこのリュック。具体的にはPAC TechnologyのK2 Plus。
スマホ回線について
中国でスマホを使うためにSIMを調達する必要がある。ものによってはVPNを入れなくてもGoogleのサービスやLINEが使える。
最近だとe-SIMが流行りで安いと聞いていたけれど、日本語の説明がなかったり少し不安だったり、別途そのためにアカウントを作ったりアプリを入れたりするのが嫌だったのでAmazonで安い中国旅行向けの物理SIMを購入した。
どういうわけかAmazonだとe-SIMのほうが高い。なぜ?
8日間7GB。これで十分。
選んだSIMは中国で問題なく使うことができた。Twitter(X)も、Instagramも使える。ふたばちゃんねるへのアクセスも問題ない。書き込みはしていないが。
ただ、一部動かないアプリもあった。Yahoo!天気のウィジェットが更新されなかったり。ソシャゲのウマ娘アプリもダメ。
ここらへん、どういう違いがあるのかよくわからない。
まあ合宿中そこまで不便を感じなかったのでわざわざVPNを入れて使用するということもしなかった。
お金、電子決済について
中国は今や完全な電子決済社会となってる。現金が使えないところが多い。クレジットカードすらダメだ。
一方でAlipayかWeChat Payのどちらかならどこでも使える。
少し前まで外国人旅行者は使用できなかったり、チャージが必要だったり、手数料が嵩んだりしたけれど、2024年11月現在はクレカを登録するだけでいいし、手数料も200元までならなし。
元→円変換レートはクレカの指定する値が使用される。残る手数料はクレカの海外事務手数料で、これは中国元の現金を換金ショップなどで買うより安い。
念の為500元、おおよそ12000円ほど中国元の紙幣を持っていったけれど使う場面はまったくなく、ホテルでの滞在費の支払いに使ったくらいだった。
AlipayとWeChat Payについてはどちらが良いかわからず、またWeChatは現地での通信手段のために一応入れていった。
結論から言うとAlipayのほうが安定していた。
電子決済の方法は店のバーコードリーダーに電子決済のアプリのバーコードを見せるか、あるいは店に掲載されているバーコードを読み取って金額を入力するかのどちらか。
前者はしっかりとした店に多く、後者は小さな店に多い。そして後者の場合、WeChat Payだと失敗するケースが何回かあった。
これは全員というわけではなく、自分はOKでも仲間はNGということがあったり。クレカ会社が怪しいと思って弾いているのかもしれない。クレカが海外で使われる形になるので、事前にクレカ会社にその旨を連絡していたのだが……。
でも基本的に使っていたのはWeChat Payで、AlipayはWeChat Payで決済が失敗したときのみ使用していた。
WeChat Payはその時、最初の使用から7日間は1000元の支払いまでクレカの海外事務手数料が無料!というキャンペーンをやっていたのだ。
これはお得なので使わざるを得ない。
これは確か朝食用のパンを買ったときのWeChat Payの支払い画面。海外事務手数料が掛かってない、という記載がある。
まあ、まだこの請求が来ていないので「実は掛かってんじゃん嘘つき!」となる可能性もあるが………。
近いはずだけど、実際のところ結構時間かかる
関空から上海まで2時間のフライト。そして上海から桂林まで2時間20分程のフライト。桂林から陽朔まで高速を使えば1時間弱。合わせて5時間強。
思ったよりも近いな!と最初は思ったけれど、まあもちろん実際は違う。
まず滋賀から関空まで3時間弱かかるし、チェックインは最低でも1時間前。飛行機の乗る前の検査、入国検査、トランジットのあれこれなどで何かと待ち時間が必要だ。
今回の往路のフライトは出発ゲートが変わったり、その便が2時間ほど遅れたり。中国での入国検査は厳しく国内線のトランジット前に20分ほど待たされたり、入国カードを書いたり、指紋を取られたり、なぜか手荷物検査が2回あったり、手荷物の中のバッテリー類をすべて出すように言われたり……とにかく色々ある。ので余裕がないと辛い。
結局移動には丸一日必要になる。ぐぬぬ。
海外でのクライミングには時間が必要なのだ。それをほとほと実感した。
荷物が重い!
出発日、朝6時に起床。
荷物はそこそこ減らして無駄なものを持っていったつもりはないのだけれど、「そういや荷物って重量制限があったなー」とか思いながらスーツケースを体重計に乗せたら24kgとなっていた。
は?
預け荷物は23kgまで。それ以上は追加料金が必要になる。
別に料金を払うことはやぶさかではないがその手間が困る。
ヤバイよヤバイよ。なんでこんなに重いんだ。スーツケースが古いからか?無駄にクイックドローが20本もあるから?パジャマ的な服を入れたから?行動食が多いから?
わずかに衣料を減らして、手荷物に振り分けて、なんとか22kg台に調整。
万が一バゲッジロストした際でもクライミングができるように、ハーネスとクライミングシューズだけは手荷物に入れるよう案内があった。
それに加えてビレイデバイスのPETZLのグリグリとセルフビレイ用のクイックドローを1本、アルパインヌンチャクを1本手荷物に追加した。
しかしグリグリが手荷物検査で引っかかったらどうしよう。こんな鉄の塊なんて説明すりゃいいんだ?など、一抹の不安を抱えたまま朝飯をかっ食らう。
んで、まあなんとかなるだろと楽観的に出発。
いざ出発、往路
仲間を拾ってフライト3時間前に関空へ。関空に自分の車で行くのは初めてだったので少し新鮮だった。
名阪国道を通って行ったので高速代もほとんどかかっていない。経済的。
預け荷物の重量は……。
23kg以下!ギリギリセーフ!
まーじでギリギリじゃないかよ。服が湿気ったら終わる程度の余裕しかない。
幸いグリグリが手荷物検査で引っかかることはなかった。グリグリisグローバルスタンダード。ボーダーレスビレイデバイス。
行きの飛行機は理由の通達もなく2時間遅れ。まあ、トランジットの時間がかなりあったのでノーダメージ。
16時頃に飛行機は無事出発した。上海浦東国際空港までは2時間のフライト。
たった2時間なのになぜか機内食が出た。これには仲間全員が困惑してた。
そういうサービスなのか。
そして無事、上海浦東国際空港に到着。現地は雨。
このとき猛烈な台風が台湾に近づいており、その影響だった。
その後、時間などなど掛かりつつも入国にも成功。
空港のゲート近くにあるコンビニ、というかセブンイレブンで試しにお菓子を買ってWeChat Payが使えることを確認したり。
あと、夕食を食べたり。
ちょっと辛めの麺料理。牛の文字が入っていた以外、何なのかよくわかってない。これで60元(1300円弱)ほどだったので、空港の飯は高い。
その後国内線に乗って桂林空港へ。
着いたのは0時過ぎ。眠くてバゲッジロストが発生しても交渉できる余裕ねえなとか思っていたら幸い全員の荷物が届いていた。良かった良かった。
そこからホテルの送迎のマイクロバスに乗って、陽朔へ。
高速を使えば50分なのだけれど、中国の高速は深夜は個人車両はともかく、商業的な車両を走らせることはできないらしい。どういう理由でそうなっているんだろう。
無事ホテルにも着。
朝食はホテルで9時半にという決定を聞いていたので提示された適当なカードキーを取り、すぐ部屋に。
おお。なかなか素敵だ。すべてツインベッドの部屋なので一人で好き勝手に使える。合宿中、片方のベッドにはずっとスーツケースを広げてままにしていた。
バスタブはなし、シャワーのみ。シャワーの水の勢いはそれほど良くないけれど、部屋ごとに給湯器がありこれがかなり機敏に反応してくれてお湯の暖かさは安定していた。
シャワーを浴びてパジャマに着替えてベッドに入ったのは3時頃だったような。でも朝9時起きなら余裕余裕。とか思いながらさっさと寝た。
1日目 スイスウォール、ワインボトル編に続く。