一昨年の秋頃。
日本でおそらく最大級のボルダリングコンペティション、THE NORTH FACE CUPに参加してみた。
この記事ではその感想と、大規模ボルダリングコンペ(というかTNFC)ってどういう感じなの?って人向けの内容を書いている。
エントリーについて
細かい大会の概要については公式サイトを見てもらうとして。
エントリーはTNFのサイトや日本代理店のGOLDWINのサイトからではない。
ONE BOULDERINGという平山ユージ氏のクライミングジム「Base Camp」が運営しているサイトにてユーザー登録した後エントリーできる。
実のところこのTNFC、TNFが主催しているコンペではなく、Base Camp主催でTNFはブランド名を貸すことを含めた協賛というコンペなのだ。
ONE BOULDERINGという登録サイトは、独自のクライマーのグレード、クラス分け(管理)システムを有している。
このシステムを使っていろいろコンペを管理していこーぜ!という意気込みみたいなのだけれど、TNFC以外のコンペが管理されているのをあまり見ない。
意図したほどの効果が上がっていない、のかな?
話が逸れた。
運営がどうのとかはともかく、TNFCが大規模なコンペというのは間違いなく、日本全国で予選が行われる。
地方の人も参加が比較的容易だ。
大阪、東京といった大都市圏では年に複数回予選があったりする(実際出場できるのは1回のみ)のでスケジュール調整も楽である。
参加費用は8000円半ば。まあ少し高い。
その代わり参加賞のノベルティーが結構いい。
シューズバッグとか、クライミング用ソックス、タオル、シャツなどがもらえる。
ノベルティー代が半分を占めていると思っていいかもしれない。
(ノベルティー目当てで参加するのもありかもしれない……)
知名度の高いコンペだけあって、エントリーは混み合う。
エントリー開始時刻からしばらくの時間はエントリーサイトにアクセス出来ないことがある。サーバーがパンク状態になっているんだろう。
一番混み合うのはDivFUN(初心者・初出場限定のクラス)とDiv4(3~4級以上のクラス)。1クラスに25~40人ほど参加できる。
それでも大体1週間ほどで完全に埋まってしまう。逆にDiv1やDiv2はいつまでたっても枠が埋まらない。
初めてコンペに参加する初中級者の人はエントリー開始前までに出場するか否か決めておこう。
出遅れた場合でも、キャンセルや何故か募集人数が増えていたりしてエントリー枠の空きができていることもあるので、定期的にサイトを確認すれば良いかもしれない。
コンペ直前まで
自分は一緒に参加する仲間内で「やっぱり事前に壁構成を知っておいたほうが有利だよね」と話し合って、予選会場のジムに事前に登りに行っていた。
効果はまあ、あったと思う。課題は初見でも施設環境や壁を事前に知っておくだけでかなり有利になる。
あとは普段行かないジムに行ってオブザベ力、オンサイト力を高めたりなど。
そうこうしているうちに予選のタイムスケジュールが発表され、コンペ当日になった。
予選会場には別に最初からいる必要はなく、自分の参加する時間に予選会場に行けばいい。
予選会場となるジムは大抵大きなジムで、コンペに使うクライミングウォール以外の余裕があるみたいだった。
アップのクライミングはそこで行える。これに関しては特に時間制限などはなかった気がする。
少し早めに来たせいで待ち時間が長く、手持ち無沙汰で近くをジョギングしたりして体を温めるなどした。
(正直これは悪手だったような気がする。無駄に疲れるだけだった)
ちなみに課題は確認できる。参加しているクラスによっては登っているところすら確認できる場合もある。
なので、あれは簡単そうだから最初に挑むか、みたいな戦略を立てることができた。
コンペ中
コンペはいわゆるセッション方式。
10個ある対象の課題を参加者全員で同時に挑戦し、完登数とボーナスポイントで競う。
そのために課題トライ待ちの待機列が発生する。
1つの課題ごとに1つの待機列ではなく、1つのエリアごとに1つの待機列のため、人気の課題が揃っているエリアによっては5分以上待つこともある。
スタートしてから迷うよりも、事前に挑む課題を決めておいたほうが迷わずに済む。
時間制限は60分ほど。
正直これが長いのか短いのか判別がしにくかったけれど、今思うとちょうどいい長さだった気がする。
最後の方はみんな見込みのある課題のエリアに長蛇の列を作る一方、自分は並ぶのが嫌で人気のないエリアでマシンガントライを重ねていた。
そのため終わる頃はヨレヨレ、汗だくだった。
どうせ挑むならもうちょっと落ち着いて、レスト時間を長めにとって挑んだほうがあと1本くらいは落とせたかもしれない。
課題の難しさは予選会場によって大きく異なるようだった。
会場によっては10本全完登者続出のところもあれば、最高でも5本完登というところもある。
まあ予選で競い合う上では影響がないので、それほどグレードの統一感を求めなくても良いのかもしれない。
10本の課題というわけでクラスごとに10本あるのか~と思いがちだけれど、実際は下表のような形で半分づつ課題が共有されていた。
自分が出場した予選ではDivFUNで10本全完登者が続出、それに続く人達も9、8本完登という中、一つ上のクラスのDiv4は6本完登くらいが最高位という結果で。
大雑把に言うと微妙にDivFUNとDiv4で実力の逆転現象が起きていた。
何じゃそりゃと思ったけど、冷静に考えるとわからなくもないことだった。
ボルダリング人口はどんどん増えており、中には成長の早い人もいる。
そんな人が「腕試しの初参加です」と言いながらDivFUNを選んだりするのでDivFUNが魔窟になるのはしょうがないことなのかもしれない。
コンペの最中は平山ユージ氏が実況をしたり、DJが音楽を流していたり、Red Bullが飲み放題だったり……ちょっとしたライブ会場のような感じだった。
結果とコンペに対する考え
リザルト(順位表)は全クラスが終わる頃に張り出される。
最後に行われるDiv1では日本代表レベルの名立たるトップクライマーが出場するので、彼ら、彼女らのクライミングを見て時間を潰すのもいい。
途中で帰っても、速報がFacebookなどに掲載されるのですぐ確認できる。
ちなみに自分はDivFUNにて完登数4本、最後から2番めの成績。
最下位の人が40半ばのおじさん(完登数2本)だったので、実質最下位みたいなものだった。
……いい経験になったね!
アスリートではない人にとってボルダリングのコンペは、上に挑むという意味以外の要素が強いように感じる。
というのも上の人達はジムに行けばいつでも会えるからだ。
ホームジムにいるトップクライマー達に登り勝てるか?
答えはNOだ。正直一生勝てる気がしない。
コンペで使われた課題はしばらくそのジムに残る。
なので有名なセッターの課題目当てで参加するというのも違う。
じゃあ何のためにコンペに参加するのかというと、一つの節目としてとか、刺激を得たいとか、単純に競うのが好きとか、一回経験してみたいとか、そういう類なのだと思う。
(メンタルやオンサイト力の成長には役に立つのかもしれない)
自分の場合は「一回経験してみたい」だった。
自分の周りではコンペに参加する人が少ない、というかコンペ指向の人が少ない。
気づかないうちにそういう影響を受けているのかもしれない。
TNFCの結果は散々だったけれど、楽しかった。楽しめてよかった。
その結果登るスタイルが変わるということもなかった。
でもまあしばらくコンペはいいかな……。
……と思って早1年。
近所のクライミングジムでコンペが開かれるのを聞き、それに参加することにした。
今回も勝つとか負けるとかほとんど考えていない。
コンペ当日に悔いのない登りができるように、コンペを楽しめるような登りができるように、心身を整えていきたい。