まえがき
以前、備中の岩場への泊まりでの遠征を企画してくれたクライミング仲間から「GW前半の平日に小豆島にある赤獄の岩場にでも行きませんか?」とお誘いが来たのは、3月末のことだった。
ほう。小豆島。赤獄の岩場。知らない。
小豆島と言えば吉田の岩場くらいしか名前を知らないし、そもそも島自体に行ったことがない。
まあでも仲間が誘ってくるのだから良い岩場なのだろう。
幸いGWの予定はまだ埋めていなかったので調べることもなく「行きましょう」と返事をしたらあれよあれよと遠征企画が進んでいった。
- 開拓、公開されたばかりの岩場であること
- ルートが長く、最低でも70mロープが必要であること
- ピン間隔が広く、トラッド要素もあること
- 高グレードばかりの、上級者向けの岩場であること
などのことをジムのクライミング仲間から教わったのは、後になってからだった。
……おいおいおいおい。大丈夫か?こちとら初~中級者みたいなもんだぜ?メンタル面に関しては初心者に負ける自信だってあるぞ。
尻込みしつつも「まあ、さすがにグレード的に登れない人に声はかけないだろ……」と仲間を信用しつつ、準備を進めた。
80mロープを買ったり、同じく高グレード向けな柏木の岩場に出向いてみたりしたのは、この遠征の前準備だった。
赤獄のルート自体は基本的に70mロープで足りる。80mが必要なのは一部と高グレードなルートばかりだ。
それでも80mロープを買ったのは「あーやっぱロングルートはnot for meじゃ。もう二度とやりたくないぜ」とかなったときに30mのジム用ロープ+50mの外用ロープに切るためだった。
70mだと切ると半端になるので。
あとは天気を祈った。
前日の30日は朝まで大雨だったが、1~2日は晴れとなっていた。
やったぜ。
小豆島へ
小豆島自体行くのは初めて。
滋賀からなので比較的近く、フェリーに自家用車を乗せて行く方法を取ることにした。
もともとは姫路から朝一番の便で島に渡るつもりだったのだけれど、フェリーが減便して微妙になってしまった。
なので、神戸から高松経由で小豆島へ向かう夜行便を使うことにした。
小豆島-神戸|ジャンボフェリーの時刻表・料金・予約・お得な割引
特にトラブルもなく、乗船。
自家用車の場合、一番最後に乗り込むことになる。
GWのためか、雑魚寝スペースはほとんど埋まっていた。
船内は生ぬるい感じの気温で、少しの厚着+ブランケットくらいで寝れる。
船の乗り心地は悪くないけど、ちょっとうるさい。耳栓とアイマスクはあった方がいい。
ぐっすり寝れた感じはなかった。
5時頃に高松についたことを知らせるテーマソング?が大音量で船内に流れ、起こされる。
あとは2度寝したり、朝飯を食べたり3度寝したりしてたら予定時刻に10分遅れで小豆島の坂手港に着いた。
快晴。
フェリー内の細かな写真がないのは、撮影禁止なので。トラブルを避けるためだろう。気をつけよう。
船内撮影に関するお願い 2023年02月01日改訂 | 『ジャンボフェリー』公式サイト
早朝のコンビニで少し買い物をして、岩場へ車を走らせた。
8時、ほぼ1番乗りで駐車場に到着。アプローチ開始。
アプローチがヤバイ
トポにはアプローチに30分ほどと書いてある。
アップダウンはあまりなく、トラバースだと聞いていた。
ただ、ジムの店長からは「あの岩場のアプローチはかなり危険だから気をつけたほうがいいよ」と言われていたけれど……最初の25分くらいはあまりそういう気配がなく、「どこがヤバイんだろうか?」と思っていた。
ただし。最後、ジャンボリーケイブエリアに入る手前。
確かにヤバイ。フィックスが張ってあるとはいえ、岩は脆いし崩れるかもしれないし、足を滑らせたら大怪我不可避。
アプローチを始める前にハーネスを着けてセルフビレイ可能にしておくことをオススメする。
岩質について
下部のボコボコとしたところが礫岩、上部の角張ったところが安山岩らしい。
礫岩の岩場は登ったことがなく、新鮮。
そしてこいつがとんでもなく欠けやすい。それだけでなく、上部の安山岩も容赦なく欠ける。
え、マジ?そんなに?ってくらいに欠ける。
それを覚悟して落ち着いて探ってから登る必要がある。
仲間の一人は左岸壁にあるStone Field 5.12aを登っていて、2ピン目のカチを握ってムーブを起こしたところ、それが欠けてフォール。
下部の岩にお尻を強打して遠征後半はほとんど回復に専念していた。
このルートは取り付いた誰もが「欠ける」「安心できない」と言っていたので注意したほうが良いのかもしれない。
ケイブの中で最も登られているであろうステイゴールド 5.12aもゴール前が欠けてフォール、欠けた大きめの岩が人に当たりそうになっていた。
自分が取り付いた時も下部の礫岩のガバを掴んだところ、拳2個分くらいのサイズの岩がまるごとボロっと欠け落ちた。
とにかく油断できない。
安定するのはいつになるんだろうか……。
その頃にはルートのグレードが変わったりするのかもしれない、とか思った。
左岸壁、左岸壁左側エリアにて
居心地の良く、取り付きやすく、木で影になっていて休みやすい左岸壁エリアにて荷ほどきして、最初に取り付くルートをいろいろ見て回った。
やはり☆☆☆な日々是好日(にちにちこれこうじつ) 5.11cが人気。
この岩場に何度か来ている仲間がStone Field 5.12aを登るのをビレイをした後、それに取り付こうと思ったけれど仲間がまだ登っていた。
待つ時間ももったいなく、自分が登りたいと思っていたルートに取り付くことにした。
蒼(あお)の境界 5.11b
せっかく80mロープを買ったんだから、それを使えるルートを登りたい!と思って選んだ1本だった。
トポには「ただ長いだけ、ランナウト気味、景色がいい」と書いてある☆☆ルート。
景色を撮るためにスマホをポケットに、そしてスマホの落下防止のためにリール付きコードをハーネスにつけて登った。わざわざこのために100均一で買った。
なんたる不真面目。
映え意識クライマーか?そうだよ。
トポには日々是好日(にちにちこれこうじつ) 5.11cがアップに人気とあるけれど、個人的にはこのルートが一番アップにいいと思った。
長いけど、ガバが多く、グイッと全身を使って動く動作が多数。立って休めるような場所も多数ある。体のあちこちがほぐれる。
ホールドがとにかく良いのでランナウトはそれほど気にならなかった。
「ボルトがそこにあるということは、そこまでは難しいことはないだろう」とか思いながら進んだ。
最近はボルトの位置もヒントというか、開拓者、初登者の意図だなというのをしみじみと感じる。クリップは初登者との時間を超えた会話なのだ。
……ところでこのルートを登っている最中に6mほどランナウトしたが、「まあそこまでガバだからそういうことだろう」と思ってたら1つボルトを飛ばしていた。
会話ができてねー。コミュ障だからしょうがないね。
ルートの途中にはいくつか多肉植物が生えてた。かわいい。
終了点からの眺め。残置カラビナあり。
グレードの感覚的には5.8を3つつなげたようなルートだろうか。
滋賀にある千石岩の千石ノーマル 5.7を4~5つつなげたような感じ?
難度はないけど気持ちのいいルートだった。
人によっては「しょうもないルートだ」とか言うのかもしれないけど、自分は好きだ。
ちなみに70mロープでも超ギリギリでロワーダウンできる。ビレイヤーが背伸びするとクライマーの足が着くくらい。すっぽ抜け注意。
あまり覚えていないけれど、クイックドローは16本くらい使ったような。18本あれば確実。長めな方がいい。
デクラス 5.12a
次は日々是好日(にちにちこれこうじつ) 5.11cに取り付こうと思ったのだけれど、やりたい人が来たのと、登った人が「めっちゃパンプした」と言っていたので順番を譲ることにした。
今からパンプさせると何かと予定が狂いそうなので。
仲間から取り付きやすいと教わり、クイックドローの掛かっているデクラス 5.12aをやってみることにした。
基本ガバ、たまにカチという感じのルート。他のルートと比べて短め。
カンテを左右に弱点を突いて登っていく。
核心部は高いサイドアンダーをガストンするのだが、これがリーチが無いとかなりキツイらしい。自分は標準的な体格なのでまあキツイくらい。
その時のボルト位置が低めで、これも恐怖心を煽る。
オンサイトトライでその核心はこせたのだけれど、その後のムーブ、ホールド選択がわからずテンションした。
しっかりムーブ構築、確認してからトップアウト。
レストを大きめに挟んで再度登ったところ、登れた。
ここからの景色も、もちろんいい。
この日の天気予報は昼から西風が風速5m。
日差しの下は暑いけれど、風が心地よかった。
風が強く、掛かっているクイックドローが流されてクリップに焦ったり。
5.12aをワンデイで登れたぜ!と言いたいところだが、まあ、他の岩場に持っていけば5.11b/cくらいだと思われる。
これが日本と世界のデシマルグレードの乖離ということなのかしらん?
なにはともあれ、登れてハッピー。
ガジュマル 5.10d
最後に何か1本登っておくかー。
でも明日もあるしな……ということでエリアで一番簡単なルートを選んだ。
下部あたりが核心に感じた。
思ったよりホールドが良くないし、怖い。
上部のハングのトラバースも「あれ?」という感じになるけど落ち着いてこなせば問題ない。
完登。
1日目おしまい
帰りはアプローチが長く感じた。
下山してドラッグストアに寄って、ついでに朝飯を買ったり、お尻をぶつけた仲間が鎮痛剤を買ったり。
宿は小豆島オリーブユースホステルの素泊まり。
小豆島オリーブユースホステル【公式】 音楽合宿・スポーツ合宿・研修に
ちなみにこのホテル、赤獄のトポが置いてある。
施設に不満なところは特になし。
岩場にいたクライマーの話によると、千種旅館というところが良いらしい。
食べきれないほどの新鮮な魚料理が出るのと、JFA会員なら割引が効くとか?
次行くときは使ってみたい。
飯にそれほどこだわらないクライマーなので宿から近くにあるグリル山というところに行ったら、21時まで営業しているはずが19時で閉店していた。
材料がなくなると早めに閉めるのだとか。
同じ店舗が経営しているところがギリギリ弁当だけやっていたので唐揚げ弁当を買って帰った。
唐揚げは美味かった。
みんな疲れていたのか酒も飲まずに22時前に就寝。
普段そんな早く寝ないので落ち着かない感じになりつつも、自分も23時には寝ていたと思う。
2日目に続く。