新年に相応しい快晴。風もあまりなく、暖かい日。
2020年の幕開け。黒潮ボルダーで一人、外岩ボルダリングを楽しんできた。
前日についてはこちら。
ホテルで目を覚ましたら4時過ぎだった。どうにもパッとしない新年の迎え方である。
まあ、元日などというものは所詮不完全なグレゴリオ暦による区切りでしかなく、昨日と今日の連続性は普段と違いなどないから……などと理系っぽく理屈をつけて自分を慰めつつ、二度寝した。
6時に起床。体調は問題なし。
富士からの初日の出に関する番組を見ながら、少しだけ朝飯を食べた。
当初の予定では初日の出を拝み、そのまま松風の岩で松風 1級のリベンジするというドラマチックかつフォトジェニックな行為を行う予定だったのだけれど。
松風の岩のある海岸線は初日の出を拝む一般の方で賑わうと聞いていてためらっていた。
日の出10分前、Googleマップの混雑具合を見てもこの有様。ここからさらに酷くなっていった。
たまたま松風の岩で新年を迎えていたTwitterの相互フォローの人から現地の状態を教えてもらい(ありがとうございます)、厳しそうなので目的地を変えることにした。
黒潮ボルダーの名村エリアへ。
雲ひとつない空に浮かんだ新年の太陽を眺めつつ、車を東へ走らせた。
駐車場への入り口にちょっと迷ったけど、無事到着。
青い空に青い海。太平洋は穏やかに凪いでいた。
それにしても暖かい。タイツを脱いでダウンジャケットも車に置いていった。
ひとまず近場で遊んでからメインの岩場に行くかなと、駐車場に一番に近い漂着岩から開始。
高さがあるけれど、下地が良いのでアップには良さそうだった。
まずは右面にある右フェイス 6級から。
って、ガバから次の中間部悪っ!6級と思えないホールドが並び、選択肢に惑わされた。そして高さにビビって降りた。
舐めてかかると駄目だな……。
覚悟を決めてやや悪目のホールドを取り、何とか完登した。
これは最初から気が抜けないぞ……。
このとき、LINEで外岩仲間などから新年あけましておめでとうメッセージが飛び交っていたので、急遽撮った動画を年賀状風に加工にして送りつけた。
うーん、何をどうやってもフォトジェニックに撮れる場所だなあ。
でも、これ、6級なんだぜ……。
続いて岩の左側にある左フェイス 6級を登った。
これはグレード相応な感じだった。
そして、岩の中央部~左に抜ける、見栄えのするクラックのあるレイバック 3級に挑戦開始。
スタートはよくわからないので、とりあえずこれで行った。
うおっ!この課題めっちゃ面白い!
ムーブ解析、構築の楽しみが詰まってる。これでもまだ★★課題とは……黒潮ボルダーの充実度半端ねえな。
スタンスや手順を色々変え、少しずつ手を進めた。
壁面に日がガンガンあたり、日差しの下においた温度計は35℃を超えていた。暑い。ややヌメる。
適度に日陰に入り、もぐもぐタイムを発動しながら課題の攻略方法を思案した。
この旅で初めて高知名物のミレービスケットを買ったけど、美味いなこれ。
外岩時の小腹がすいた時にも最適だ。もっと買えばよかった。
長い時間を掛けながら試行錯誤を繰り返すも、上部のクラックで詰まってしまった。
あともう少し閃きがあれば、どうにかできたのかもしれない。
しかし、これだけに時間と体力をすべて注ぐのはもったいなすぎる。
あと数トライだけ、あと十数分だけを繰り返しつつも結局決定的な瞬間は訪れず。
無念の敗退となった。
ちくしょう……。
すごく楽しい課題で、可能性が見え隠れしつつあったのに……名残惜しく、悔しかった。
名課題の多い波打ち際の岩は、潮位がまだ高く触るのは難しそうなので後回し。
海岸線を北に進む。
他人のマットを借りて、目についたキューブ 5級の岩を登ったり。
(マットを貸していただいた方、ありがとうございました)
これは非常に簡単だった。課題のある岩が岩の上にあるので、むしろアプローチや下降のほうが大変だったり。
ゆっくり歩みを進め、黒潮ボルダーを代表する課題と言われる★★★課題の縁 1級のあるホワイト・ボルダーに到着。
自分一人しかいなかったため、贅沢にムーブ解析から開始する。
とりあえずここまで手を進めたのだけれど……。
この後に手を出せる気がしない。もしや手が逆か。逆順でやる場合はどういう手順、スタンスにすればいいのか……。
ここらあたりから指のヨレを感じ始めた。指が開く。頭もあまり回らない。足もむくんでシューズを履いているのが微妙に辛い。
どんどん触っていきたいのに、トライ間隔が開いていく。
……疲れか。
あまりにも可能性が見えなくなったので時間を切って早々に切り上げた。
この体たらくではまともな課題は登れない。
最後になにか簡単めな課題を気持ちよく登って終わろうと決めて、エリアの北端に向かった。
マルセイユの岩の南面。フレーク・ブラザーズ(弟) 5級、(兄) 4級。
はぁー……。(クソデカため息)
トポをちゃんと読んでなかったけど、ハイボルやんけ!気持ちよさを感じる気の抜け方ができねえ!
しかも落下ポイントの半分くらいは潮溜まりになっており、マットを敷くのが躊躇われる。
かといってここまで来た以上は逃げるという選択肢はなかった。
気合一閃!
フレーク・ブラザーズ(弟) 5級、一撃。というか一撃しなかったら重症コースだこれ。
続いてフレーク・ブラザーズ(兄) 4級に挑戦開始する。
上部にあるわらじ状のフレーク手前の攻略方法がよくわからない。手前のフレークは小さく悪い。飛ばすには遠い。
中間部なら落ちる場所が固定されていたのでそこだけを狙ってマットを敷いて攻略を行った。
悪いスタンスを選ぶと、ジャリッと岩についた砂がこすれる音がした。滑りそうで怖い。右ヒールを掛けるも、これが抜けたときが怖い。怖いものだらけ。
岩が茜色に染まり始めた頃、これだろというスタンスを考えて、右ヒールをしっかり掛け、遠くてもろいわらじ状のフレークを取りに行った。
よし取れた!うおぉ、もう後戻りできねえ!
気合かつ落ち着いて登りきった。完登!
大したことしていないのに、充実感だけがあった。
日が沈むのを眺めつつ、荷物をまとめて駐車場に戻った。
昨日みたいに温泉→高知グルメと行きたかったけど、それをする体力がなく、帰れなくなりそうだったのでいち早く帰途についた。
のんびりとマイペースで高速を走り、途中のSAで徳島ラーメンなどを食べたり。
日が変わる頃に無事家にたどり着くことができた。
思い返してみると、ずいぶんもったいない、言い換えれば贅沢な時間の使い方をしている気がする。
看板課題はそっちのけにして、自分の興味を持った課題に打ち込んでいる。
これは悪いことじゃないとは思う。まあ、自分でも少し思うところはあるが……特に悔いなく、楽しかったのでOKとしたい。
効率的に、戦略的に岩場を回るのは自分にはまだ厳しい。(そもそも効率性、戦略性を高めたらより楽しいのか?という疑問もある。)
とりあえず、今回は一人での外岩旅行の経験が積めて、そして何より怪我なく帰れたことが嬉しかった。
今回の旅で至らなさを感じたのは、自分のムーブ構築力のなさだ。
自分は登る前に動画は見ないようにしている。ムーブ構築の楽しみを最大限味わいたいというのが理由にある。
(クライミング動画の是非に関しては、下記の記事の内容が面白かった)
セッションするときはセッション相手のムーブを大いに参考にするけれど、自分ひとりで挑むときはすべて自分でこなして苦しんで、そして楽しみたい。
その苦しみと楽しみに時間がかかりすぎてる。
そのムーブに可能性があるのか、ないのか。選んだムーブの失敗・成功の原因はテクニックの問題なのか、強度の問題なのか、慣れの問題なのか。どれが自分にとって最も効率的なのか。
それを素早く判別するのが難しい。
経験値不足もあるだろうし、自分を信じるメンタルも不足しているのかもしれない。
この旅行で、自分の求めるクライミング、なりたいクライマー像が少し見えたような気がする。
現状公開されているトポの場合、スタートや限定は非常に曖昧だ。
それはトポを作った人の「明確にしない、自由をもたせる」という意図なのかもしれないけど、初登者とその近辺のローカルクライマーしか知らないとか、それに振り回されるも面倒だ。
グレードについても同じく。
できれば、自分一人の力で、自分が納得できるラインを登れるようになりたい。
そのためには、たまには一人で悶々と試行錯誤を繰り返したり。
あるいはセッションを重ねていろんな人のムーブ解析・構築を学んで、パクって、それを一人のときに活かせるようになりたい。
なーんか青臭いこと書いてるけれど、これが2020年の抱負みたいなものになった。
ともかく、この旅行に行ってよかった。
クライミングに関する行動範囲と視野が一つ広がり、おかげで行きたい場所がおぼろげながらわかってきた。
頻繁にとまでは言わないけれど、節目節目でまたこんな感じの旅をしてみたい。