一日目
起床、十一面岩奥壁へ
目覚ましを6時にセットしていて、その前に起きた。
どうやら晴れているらしい。イェイ。
前日みたいな天気はマジで勘弁だぜ。だがあんな環境でも登れるし楽しめるってわかってるからもう怖いものなしみたいなところあった。
身支度を整えて仲間のタープとのところに行ったらもうみんな食事を終え始めている。5時半頃に起きたという。早い……!
慌てて朝食を食べて、準備を進めた。
今日の予定は十一面岩奥壁でのマルチピッチ。
昨晩パーティー分けなどを話し合った結果、Joyful Moment 5.9と一粒の麦 5.10cにそれぞれ3人組で取り付くことになった。
自分はJoyful Moment組。
7時前にいざ出発。
十一面岩奥壁まではキャンプ場から75分かかるという。
しかも急登。大体500mほど上がる。
ヘビーだぜ……。
踏み跡はしっかりしていて、迷うことはない。
が、いくつか分岐があり、間違えたところに行ってしまう可能性はありそうだった。
というより遠すぎて、「本当にこれであってるのかよ?」という疑心暗鬼になる気持ちが強かった。
奥壁あたりにある広間(白砂のテラス、とか言うらしい。洒落てるな)でそれぞれのパーティーに別れて、自分たちはJoyful Momentの取り付きに向かった。
Joyful Moment Ⅲ- 5.9 115m
取り付きにはすでに2人組パーティーx2が準備中。このときの時刻は8時半くらいだったと思う。みんな早いなあ。
自分たち3人組は3番手、9時半前頃に取り付いた。
この後、4人組のガイドっぽいパーティー、さらにその後2人組が取り付いたようで、計5パーティー、10人以上が取り付いた模様。
おそらくこの日一番混んだルートだったんじゃないかと思う。
その割にそれほど待ちが発生するわけでもなかったので良かった。
快適な気温で、岩を乾いていてコンディションはいい。
天気予報は午後から微妙とあったけど、それまでには抜けられるだろうと思いスタート。
荷物は小さなアタックザックなど保っていなかったので、登攀以外の持ち物はハーネスにつけた水600mlとアプローチシューズのみ。
1P目 5.9
フォロー、3番手。
左上するやや広いクラック。ジャミングはあんまり決まらず、その代わりにスラブ面が使える。
というかクラックに付き合わない方がいい。体を落として右足を引っ掛けて、左足はスラブをしっかり踏んだほうが楽。
2P目が短いらしいので、つなげて行くつもりだったのだけれど少し前が詰まっていたので結局繋げず。
トポには20mと書いてあるけれど、たぶんそんなにない気がした。10~15mくらいのような。
2P目 5.6
フォロー、3番手。
もはや歩き。
ハイハイするトラバースとか呼ばれているらしいけれど、四つん這いになるほどでもない感じ。
3P目 5.9
リード。
過去に3Pまで上がって天候の問題で敗退した仲間いわく、「ここが一番快適」というピッチをリードで任せてもらうことにした。
クラックっぽいのは出だしだけで、それ以降はフレークガバを使うフェースなルートになる。
5.9らしいけどそのグレードはクラックのグレードよりもフェースのグレードと考えていい感じ。
初めてカムを決めながらマルチを登った。満足。
トポには40mとあったけど、あっという間にピッチの終わりへ。
まだビレイ中だったので、2段ほど下にある立ち木にビレイポイントなどを作った。
60mロープを引き上げると途中で半分の印が来たので、30mもなかったのだと思う。
20~25mくらい?
このルートのトポ表記は実態に比べて明らかに長く、どれもせいぜい2/3以下だったような……?
登るのはいいのだけれど、セカンドのビレイに苦労した。シングルロープを2本通して時間差で同時に引き上げをしていたのだけれどこれが重くて全然引けない。ロープがデバイスに入っていかない。
四苦八苦しつつ、登るとき以上の力を使いながらロープを引いた。
2人同時のビレイ、難しいわ。
こういう基本的なテクニックをしっかり習得しないといかんな。
眼前に見える小ヤスリ岩が美しい。
4P目 5.8
フォロー、3番手。
ワイドじみたルート。
ワイドと言っても、奥にハンドジャムやフィストジャムが決まる。フットジャムもよく決まる。
昨日のエンペラークラックやよろめきクラックの経験が生きた。
傾斜がないので左右に足を出してスラブを踏みながら登ったり。
5P目 5.7
フォロー、3番手。
トポには大岩を縫って歩いて一登り、と書いてある。
4P目の終わりのビレイポイントから歩き、登りまでが少し距離があり、ビレイヤーからも見えにくい。
5P目の登りで落ちると岸壁の右に落ちるので対応が困難そうなのでピッチを切って、登りの手前で改めてビレイポイントを作った。
カムでビレイポイント作るの初めてだ。これでいいのかしらん。
最後の方はフットジャムを決めるのが痛かった。
マルチ用のサイズの大きな靴は持ってきていたのだけれど、今までのクラックの経験を重視して普段クラックで使っているぴったりめなサイズのフラットソールなシューズを持っていたのがきつかったのかもしれない。
あと、クラック用のシューズじゃないのでシューズの左右の剛性が乏しく、足がヨレてくると痛くなる。
かといってクラック用のシューズを買うほどでもない。
まあ、しばらくはこれでいいだろう。
十一面岩頂上の景色は最高だった……と言いたいところだったけれど、この時間あたりから雲が多くなってなかなか晴れるタイミングがなかった。
何はともあれ天気が保ってくれて、無事に登れて良かった。
下降路
きれいに割れているチムニーを目指して、その根本を降りていく。
中はトンネル状になっているけれど、意外と危ない。
すでにアプローチシューズに履き替えたけどクライミングシューズを履いたままのほうが良かったなと思ったくらいだった。
ガイドのサイトには「チムニーを登るのもあり」と書いてあったけれど、これを登ったらどこに行くんだ?
あとは十一面岩を右側にしながら下降路の踏み跡を辿る。
10分ほどで取り付きに到着する。早い。こりゃ楽だ。
取り付きでくつろぐのも微妙なので少し下の広間まで降りて休憩していたら、一粒の麦を登っていた仲間とも無事合流できた。
計画通り、という感じ。
十一面見学
下山する途中で、十一面岩の正面壁を案内してもらった。
すごいケーブだな。
有名なベルジュエール 5.11bや山河微笑 5.10aの取り付きなどを確認したり。
仲間の一人がアストロドーム 5.11aを触ってみたいというので末端壁まで降りたところ、混んでいるらしい。
それは諦めてこれまた有名なマルチピッチルート、調和の幻想 5.10aの1P目のみを触ってみることになった。
調和の幻想 1P目 5.9+
仲間のオンサイトリードトライをビレイした後、自分はトップロープで触らせてもらうことに。
下部はちょっとワイドで染み出しが激しい。
でもここはいつもそんな感じらしい。
上まで抜けるとワイドな取り付きになるけど、サイドやフレークガバがあるので、レイバックからステミングに移る感じになる。
上部はフィスト、ハンドジャムがしっかりと決まる。
ムーブのバリエーションが富んでいて面白い。
終了点にはラペルリングがあり、1P目だけ楽しむこともできるようになっている。ありがたい。
自分は結局左隣りのT&T 5.10dの終了点の残置カラビナを使ってロワーダウンさせてもらいつつ、そのルートを観察したりした。
これも面白そうだなあ。いつか触ってみたい。
下山、帰宅
自分が登り終えたちょうどのタイミングで雨が降り始めた。ギリギリセーフ。
夕立っぽい感じで、そこそこの勢いで降る中、撤収、下山した。
十一面岩の末端壁からキャンプ場までは30分くらいで降りることができる。その間雨は降ったり病んだりしていたけれど、降りる頃には止んでいた。
コーヒーを一杯飲んで少し休憩してから、瑞牆山を後にした。
さらば瑞牆。また来る日まで。
疲れて面倒になったので風呂に寄ることもなし。
車のガソリン残量は半分以上残ってるが、表示される走行可能距離がナビに表示される自宅までの距離に50kmほど足りない。
理論上は足りるはずなんだが……。
前回は結局ビビって事前に給油してしまった。今回はそのまま行くぞと給油なしで長坂ICから高速へライドオン。
ここ最近中央道原PA(下り)でばかりご飯を食べていたのでどこで食べるか思案しながら車を走らせていたら瑞浪あたりまで来てしまった。
屏風岩PA(下り)で食べるかと車を止めたその時、20時。ちょうど閉店のタイミング。
なんかガッカリして野菜ジュースを飲んだりお菓子を食べたりして空腹を紛らわした。
結局養老SA(下り)に寄ったけど、妙にガラガラで人気があまりない。こんなSAだっけ?
一応なんか食べておくかと頼んだのは台湾とんこつラーメン。
……うーん、微妙な感じ。
凡庸なとんこつラーメンに辛味噌を載せただけ、という代物でシナジーを感じないよ!
というか疲れてて鼻が効いていなかったり味をうまく感じることができていなかった気がする。
養老SAの段階で、走行可能距離の表示は35kmほど。家まで70km強。
足りない。仕方がないので10L給油した。197円/L。クソ高い。
走行可能距離は170kmまで増えた……燃費は19L/kmくらいなのに140kmしか増えないのはおかしいよなぁ!?
この車(フリードプラス)の燃料システム、よくわからん。
あとはダラダラと家に帰って、後片付けをして風呂に入って寝た。
振り返り
初めてのワイドクラックは、まだちょっと面白さがわかってないところがある。
もう少し経験を積みたい。
マルチピッチは充実感があったのでもう少し機会を増やしたいな。ただ、手際を良くしたい。
セカンドのビレイはいつも苦労しているので、練習しておかないとなー。
あとロープをまとめる綺麗さとかも。
帰ってから数日後、全身に蕁麻疹が出てビビった。何かの食あたりなのか、疲れなのか……よくわからない。
登り過ぎ注意。
そろそろ夏も終わる気配が出てきたし、遠征ではなく地元の岩場で登るか……?と思ったら来週末が3連休だった。
もったいない。でも休むことも大切。
どこに行こうかしらん。
おしまい