ムイ

もはやクライミング日記

2020/09/22 ここでしかできないことをしよう 二日目@小川山

一日目は晴れ時々曇りという具合だったが、二日目は快晴。木陰では涼しく快適。

そんな最高のコンディションの中、小川山で初めての本格的なマルチピッチを楽しんできた。

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一日目の記事はこちら。 

kuramiya2.hatenablog.com

 

 

出発まで

元々は八幡沢周辺にあるガマスラブのガマルート 5.8 5Pの予定だったのだけれど。

昨日のクラック登攀、ワイドクラック登攀の調子を見て、せっかくだしもっと充実したところに行こうということになり。

屋根岩の2峰、セレクション 5.8 6Pに行くことになった。★★の看板ルート。

いろいろな種類の登攀が楽しめるという。

 

金峰山荘ではよく眠れた。一日目にいろいろと不慣れなクライミングをしたものの、負荷自体は高くなかったので体調に問題なし。

混むことを想定して早めに出発したかったけれど、山荘の朝食付きプランを申し込んでしまっていた。

朝食は7時から。もったいないので食べてから出ることにした。

 

朝食をササッと食べて、チェックアウト。

8時頃からアプローチを開始した。

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駐車場は満車になっていた。

 

セレクション取り付き

屋根岩周辺に来るのはこれが初めて。

パートナーに教わりながら、アプローチ開始。

カモシカ登山道から分岐ボルダーを右へ、パノラマコースを経て屋根岩2峰にアプローチした。

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取り付きに到着したのは8時半頃だろうか。

すでに1パーティーが2Pの最中で、その下で2組4名が待っていた。

やや出遅れた。でもこれぐらいならOKなのかな。

 

セレクション 1P(リード)

セレクションの取り付きは岩正面から見て右と左の2種類があるらしい?

せっかくなので5.8のクラックのある右側から取り付く。

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パートナーはスラブに苦手意識があるらしく、2Pの5.8のスラブは自分がリードすることになった。ついでに1Pも繋げて行くことに。

1P用にキャメロットの2番と5番を持っていく。

「フォローの女性が遅いかもしれないから」「見られていると緊張するから」と待っている方に先を譲ってもらい、3組目で登攀開始。

 

とりあえずクラックにたどり着いて滑落防止にC5を決めた。

そしてクラックに取り付くも……うんがぁ!!重い!体が重い!

今回は2峰頂上から一気に懸垂下降するために、基本的にセカンドで行く自分が60mのダブルロープをリュックに入れていた。その他飲み物や行動食、ギアなど含めて……とにかく重い!

リュックを背負った登攀がこんなに辛いものとは思わなかった。辛いというか、慣れていない影響が大きかったかもしれない。

少し上がってさらにC2を決めるも、重さで頭と身体感覚が混乱してうまく進めない。

一度降りて再挑戦。

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右足をクラックに入れ、左足は外側でスメア。スメアポイントを上げて右足を上げて一気に上部のガバを取った。

一段落。あとはガバの多い傾斜だった。

 

セレクション 2P(リード)

日のよく当たるスラブ。

1P終了点からスラブ面にハイステップで乗り込むのが怖かった。まだ荷物の荷重に慣れない。

覚悟を決めて乗り上がると、思った以上に足が効くことが分かった。

前のパーティーの残したチョークの目印を参考に、テンポ良く足を進めていく。

フットホールドはどこでもOKな感じだけれど、迂闊なことはできない。確実に置ける場所を決めて歩みを進めた。

登る楽しみを噛み締めながら終了点に到着。

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手間取りながらも何とか準備を終え、ロープを引き上げ、ビレイを行った。

 

セレクション 3Pその1(セカンド)

簡単なトラバースからのチムニーのあるルート。

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本来はまっすぐ3Pの終了点に進むらしいけれど、今回は外側から巻いて上がることにした。一つピッチを区切る。

少し時間がかかるけれど、経験も増えるので良いかな。

 

チムニーは経験が全く無い。

リードのパートナーのムーブを遠目で見てしっかり予習、ドキドキしながら進んだ。

いざチムニーに入ると……ちょっと拍子抜けした。

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顕著なホールドがあり、チムニー自体も短い。

スイスイと抜けてピッチ区切りポイントへ。

 

セレクション 3Pその2(リード)

つるべ形式でそのまま上がってしまう。

3P終了点の外縁部にある岩は乾燥した地衣類とボロボロの花崗岩で、足に力を入れるとジャリジャリと音を立てる。

うっかり滑りそうで怖かった。

 

3Pの終了点は立木。

支点構築に一苦労。というか、悩みや迷いが多く時間がかかった。

手持ちのギアで最適な距離の支点作り、リスクの分散、バックアップも用意する経験がまだまだ足りていない。

これは登攀中に常に感じたことだった。

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(本当はバックアップのセルフはもう一方の支点から取ればよかった、な例)

 

3Pの終了点で、2峰南稜下部のマルチピッチルートと合流する。

ビレイ中に南稜側から2組4人上がってきた。

自分たちがプチ渋滞の原因となっており、やや焦る。

まあでも、焦っても仕方がないや。落ち着いていこうと開き直ってビレイ、登攀に集中した。

 

セレクション 4P(セカンド)

技術的にはここが一番辛かったかもしれない。

よく日の当たったややワイドめなクラックからスラブ、簡単なワイドクラック、そしてスラブ。

 

高度を稼ぐために左足を木に乗せるのも滑りそうで怖い。クラックは微妙にオフウィドゥスで手足が決めにくい。

しかし上部サイドガバもあり、落ち着けば問題なく進むことができた。(といっても気合いのために声が出た)

次のスラブでのハイステップがまた怖い。手が少し悪く、慣れてきたとは言え荷物の重さが邪魔をする。これも声を上げながら乗り込み。

後はサクサクと進んだ。

 

セレクション 5P(セカンド)

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小さめ岩稜を2つのっこして、アンダーホールドを持ちながらトラバースする。

何だこれは……たまげたなあ……。手足がすっぽ抜けたらどうなるのか……こんなの絶対リードしたくないぞ。

ここらへんで若干嫌気が差したのを覚えている。

 

リードするパートナーが以前登ったときは、混雑の関係で4P終了点から真上に抜けるⅢ級ルートで終了したらしい。ここからは未経験の領域とのこと。

ランナー、ギアの選択に四苦八苦しつつも、無事終了点に到達された。

よし、自分の番だな。

 

ドキドキしながらトラバースに入ると、思った以上にアンダーホールドが持ちやすくてホッとした。

スラブの傾斜もひどくなく、どこでも踏める。

しかし、これをカムを決めながら進む余裕はまだまだ自分にはないなー……。

 

アンダー、スラブゾーンを抜けた後は、アンダーに潜り込む!

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さらに、腹ばいになって進んだ。

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「これがクライミングなのかよ!」とぼやいた記憶がある。

 

セレクション 6P(セカンド)

左に行けば5.9、右に行けば5.7。

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綺麗なクラックはハンドジャム、フットジャムがよく決まりそうだった。

もちろん妥協はせず、左の5.9ルートで進む。

 

リードが上部で苦労しているのを見て不安を覚えながら、いざ最後のピッチへ。

クラックは問題なし。やや広いけれど足も手もバッチリ決まる。右足を打ち込んで左足をスメアし、拾いやすいフットホールドを選んで体を上げていった。

問題は上部で、マントル、スラブ気味なワイドへと変化していた。

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なんだこりゃ!全く気が抜けない!

しかしやることは一つだ。右足ジャムをしっかり決めて、左足でスラブを踏み押し上げていく。手は適当だよ!手より足が何より大切!

 

……。

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完登!やったぜ!

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頂上についたのは12時前くらいだった。3時間半かかったのか……。

 

セレクション 下降

麓に降りるまでがマルチピッチ。一番事故が多いのは懸垂下降時。

リュックからダブルロープを取り出してダブルフィッシャーマンで連結。

しっかりマッシャー、下降器が効いているのを確認してから下降した。

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後のパーティーが50mダブルロープで降りていたけれど、ギリギリ届いていた。

50mロープで良かったのね。

 

再度取り付きに戻って少し食事をとった。

初めての本格的なマルチピッチの感想は……なんというか、良し悪し、好き嫌いの感情がパンクしてよくわからなかった。未だに処理できていない。

楽しいところもあれば嫌気が差すところもあった。

いささかアドベンチャー要素が強すぎて自分には向いていないような気もする。

でも、もうちょっと経験を積み重ねないと判断ができないような……。

 

とにかく、もうちょっと講習など重ねて、各種手際を万全にしていきたい。

命に関わるレベルはないものの、細かな不手際はいくつかあった。

1つの重大事故には29の軽微な事故があるものだ。(ハインリッヒの法則

まずはそれが重ならないようにしないとなあ。

 

休憩

当初の予定ではもう一本マルチピッチ行っても良いんじゃないのとか言っていたけれど、もうすでにお腹いっぱいだった。

簡単めなスポートルートでリフレッシュして終わりたい。

 

屋根岩2峰にあるダーク・クリスタル 5.9あたりのスラブでもやってみるかな、と思ったけれど、セレクションが未だに混んでおり、取り付いているクライマーが多数。

パートナーのお腹が空いていることもあったり、腕時計を山荘に忘れた連絡があったりもしたので、一度キャンプ場の車に戻ることにした。

 

休憩が終わった頃にはすでに14時過ぎ。

一番近い兄岩下部スラブに案内がてら、行くことにした。

 

途中アプローチを間違えて、弟岩、母岩まで行ってしまい、時間と体力を無駄に消耗した。

 

ピクニクラ 5.10b

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以前は熱中症気味でヘバッていて、トップロープで挑みつつも1テンしてしまったルート。

リベンジがてらに挑戦する。

トップロープで挑んだために、プロテクションについて曖昧な認識だった。

とにかくボルトが多かったのは覚えていたので、2~3個ほどカムがあれば良いだろ……と適当にギアを選択して進んだ。

 

足りないよ!全然カムが足りないよ!

途中でカムの選択を失敗したり、足りていないことに気づいてクライムダウン、ロワーダウン。

これを2回も繰り返してしまった。

 

そして3回目でようやく上まで登りきった。

内容的にはグダグタで最低な登攀だったけれど、とても充実したクライミングで良い経験になった。

自分で最適と思うカムを選択する、後のことも考えて選ぶ、しっかり決める。そして不足や危険を判断して問題があれば潔くクライムダウンする。得られるものが多かった。

失敗で得られる学びはデカい。

 

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台風が近づいている影響か、山には雲がかかり始めていた。

泊まった山荘のある景色を名残惜しく眺めてからロワーダウン。

 

最後、パートナーのタジヤンⅣ 5.10aをビレイ。見事にオンサイト。素晴らしい。

下山して17時半に帰途についた。

 

今後

今回の小川山ツアーはトラッドの多い内容になった。

大きな怪我もなく、狙い通りのことが概ね達成できて満足な遠征だった。

 

しばらくするとホームジムにしているボルダー店でホールド替えもある。

近所の岩場のシーズンも始まる。

マルチピッチ講習もまだ途中だ。

 

やりたいことが多くて悩ましい。

まあ、でも、まだ「集中と選択」はしなくても良いだろう。

登攀力がやや下がるのは承知の上で、興味を発散させて体験を増やしていこうと思う。

ばら撒いた経験の点が線となって、面となってかならずどこかで役に立つはずだ。

 

遊びなんだから、今やりたいことを気兼ねなくやれば良いんだよなあ。