まえがき
金曜が大雨。土曜は寒気が下りてきていて気温よりも寒く、風が強く、雨もぱらついているような日だった。
行くなら日曜。どこに行くか。
週半ばになっても考えられていなかった。
先週は芹谷屏風岩でひどい体たらくだったので、それをリベンジしに行くのもいい。
仲間は椿岩に行くという。それについて行くのも悪くない。シザーハンズ 5.12a/bとか触るのもいいだろう。
地元の岩場も開拓が進んでいるのでそれを触ってみてもいいし……と優柔不断な状態になっていた。
猿 5.12aをRPして、前回のひどい登りで、これから難しい岩場や遠方に出かける予定もある。
何から取りかかれば良いのかよくわからん。
と、そんな中「瑞浪屏風岩に行くので誰か行きませんか」と声がかかった。
瑞浪は行ったことがない。冬のクラックの岩場、くらいの知識しかなかった。
声のかかったグループは基本スポートルートを登る人がメインで、トラッドやアルパイン志向の人は少ない。
交通料金の折半要員かな(ひでえ考え方だ)などと思いつつも、普段行く機会のない岩場ならこのチャンスを逃すのももったいないと思い。
参加しますと返事をした。
前日はどういうわけか寝付きが悪く、寝不足。
車の中で寝かせてもらった。
岩場についたのは確か8時半少し前くらいか?
この段階で路肩に大量の車が止まっていた。たぶん、最終的に15台くらい止まっていた気がする。
それを見て「あ、これはヤベえな」と思った。
車の数からすると岩場に30人くらいいてもおかしくない。クラックルートと言えば基本トップロープでリハーサルする。
快適に登れる場所なんてないんじゃないか……?などとビクつきながら、この岩場に何度か来ている仲間の後ろについていった。
彼らの狙いは新人クラック 5.9のリードらしい。
展望岩の上にある広場に荷物を広げて、登攀準備開始。
準備開始と言っても、どんなルートがあるのか大して調べてもいなかった。
狙いも特になかったのでクラックに関してはトップロープを張られたものだけやろうと考えてた。
そしてワイド、オフウィドゥスじみたものはやるまいと考えていた。
天気はよく、日差しの下は暑かった。乾燥しているのでなんとか登れる、という感じ。
日陰になっているところはすこぶる快適だった。
???
広場すぐ横にあるボルト2本のスラブ。
仲間から「これとかどうです?」と言われたのでやってみることにした。
まあまあ程よいホールドや結晶などが見えたので、まあなんとかなるだろうと。それに右から歩いていけば終了点まで行ける。登れなくても回収は容易。
最初はこれがロンパールーム 5.9だと勘違いしていた。
フラットで硬い5.10 ASYMを履いて、いざリードで。
最初は左から上がる方法がわからずそのまま右にトラバースしてしまい、どうにもならなくなったので一度飛び降りた。
もう一度取り付いて右足をハイステップで上げることができることを確認。あとは結晶を頼りにおっかなびっくりな感じで登っていった。
一発目ということもあってか、結構難しかった……けど、まあなんとか完登。
念のためにもう一度リードで登った。足が落ち着けばそれほど難しくはない。
個人的にはこの後でやったロンパールーム 5.9より難しい気がした。
履いているシューズが違うので何とも言えないが。
新人クラック 5.9
スラブを登り終えたところ、アルパイン志向な仲間二人は新人クラックをリードで完登できたという。めでたい。
終了点を安全環カラビナに替えて、トップロープにして取り付くことにした。
混んでいるかと思いきや、幸い誰も待っている気配もなくてよかった。
テーピングで手の甲を痛めるのが嫌だったので、手作りジャミンググローブをテーピングで補強して登ることに。不真面目な取り組み。
……ジャミンググローブというより、手甲という感じだな。ニンニン。
話によると新人クラックなんて名前だが実情は新人返しだの新人いじめだのなんだの言われてるグレード以上に悪いクラックらしい。
下部は手足がよくきまるが、傾斜しててキツイ。
その上に行くとクラックが広がってて、うまくハンドのサイズを調整してきめていかないとキツイ。
いやーキツイっす。
足はきまるのだが、手がうまくきまらない。
ハンドジャムで指先に力が入ってしまい。指が固まって曲げられないなることがしばしばあった。ジャミング下手くそ過ぎ問題。
上部は広がってて半身を岩に入れないと厳しい。両手を突っ込めない。
……これ、やるつもりのなかったワイドじみた代物じゃねえか……。
まあ楽しい感じなのでやるけど。
ロープを頼りになんとか上まで抜けた。
それにしても、疲れる……。
2回目は1回目よりもスムーズに進んだが、やはり中間部が難しい。
3回目。両手をクラックに突っ込んでハンドジャムをきめてあがるのが厳しいので、左手はクラックをガストンで持って体を上げていくことにした。こっちのほうが楽。
純粋なクラッククライミングとは異なるのかもしれないが……まあ、いいだろ。
こちとら初心者だぞスタイルに拘る余裕なんかねえよ。
3テンくらいで登りきった。満足したし、これ以上占有してるの微妙な感じがしたので離れた。
ロンパールーム 5.9
昼飯を食べて、次はスラブ。
日のよく当たったロンパールーム 5.9。
ボルト間隔が長いとあったけれど、地元の岩場で慣れていたのでこれくらいは問題ない。
しかし落ちると嫌なのでサイズの小さいソリューションコンプを履いて登ることにした。
リードで挑む。
このルートは快適だった。
傾斜が程よく、ホールドが顕著で結晶も欠けるような気配もない。その前のスラブは微妙に汚れてて不安な感じがあったしな……。
サクサクと進んで完登。
楽しかった。(小学生並みの感想)
イニシャルステップ大松ルート 5.10c
もうちょっとレベル上げてもいけんじゃね?と思って近くのスラブに取り付く。
1ピン目が立って掛けることができる。そしてそこさえ抜ければなんとかなりそう……なのだが、全然離陸できなかった。
左足の結晶に乗るっぽいのだが、シューズがたわんで全然乗れない。
よく日が照っているせいで指をかけている結晶がヌメる。
何度もやったのだが結局まともに浮けず、敗退。
指皮とソールを削るだけで終わった。
感激 5.10a
せっかく瑞浪に来ているのだから、やはりクラックを触らねば。
というわけで、日陰になって快適そうな感激 5.10aにトップロープを張って挑むことにした。
このとき、ビレイパートナーをしてくれていた仲間の両足の太ももが攣るというハプニングが。
インターネットで治し方を検索して、それをやってもらったところなんとか治ったみたいだった。ネットは万能。
それはともかくトライ開始。
最初の足上げに苦労するが、しっかりとハンドジャムを決めたらなんとか上げることができる。
出だしの木の根っこを踏むの大切。最初から高度上げないとつらい。
横に段がついているところまではなんとか行くことができるのだが、その先からクラックのフレアがひどくなっていって、全然ハンドジャムがきまらない。
フィストをきめて進むが、こんどはフィストさえきまらないサイズになっていく。
もどかしい。手が決まらないと足が上げられない。足が上がらないと、手が……。
ロープの力を借りてゴリ押しで抜けた。
ボルトが出てくるあたりの、上部のスラブは簡単。
一応もう一回、下部のクラックをやってみたけどやっぱり難しい。
うまく対処する方法がわからない。オフウィドゥス難しすぎ。
原住民 5.10b/c
仲間が先に取り付いていた、スラブじみたフェース、原住民 5.10b/cに挑む。
もちろんリードでGO。
ヨレはじめ、ヌメリはじめていたけれどまあ10b/cくらいならなんとかなるだろ、と思っていたけれど、甘かった。
ボルトが少なくて怖い。
核心は2ピン目からと聞いたけれど、1ピン目の上も怖い。
悪い、日光で温められてヌメるそれほど良くないカチを持ちながら、ボルトがスネくらいにある状態で立ち上がって、バランスを取って右のガバを取りに行くのだが……怖すぎる。
心が折れた上、小さめのソリューションコンプを履いて足が痛くなってきていたのでテンションをかけた。
その後はテンション祭りである。
3ピン目から、上のガバ取りまでも難しい。
これで5.10b/cなのか……難しすぎる。個人的に5.10d~5.11aくらいあってもいいんじゃね?という感覚だった。
ヨレとかコンディションの問題なのかもしれないけれど。
途中、ムーブを探っていたら足が痛くなりすぎてセルフを取ってシューズを脱いで休んだ。
結局にっちもさっちもいかなくて、仲間が次はトップロープでやるのでスリングで足場を作ってA0で抜けた。情けなし。
最後にもう一回、リードでやったけれど足が痛すぎるしやはりヨレるしヌメるし落ちる気持ちしか湧いてこず、何回かテンションをかけながらとりあえず上まで抜けた。
無様。
しかし面白いルートだった。いつかリベンジしたい。
この段階ですでに17時を回っていたので、下山した。
あとがき
車の数、人と数の割になぜか自分たちの取り組むルートにはそれほど人がおらず、快適に登ることができた。
不思議。
何度か来ている仲間も不思議がっていた。
こういう幸運もたまにはあるってことなのかしらん。
帰りにセブンイレブンでからあげ棒を買って食べた。
セブンはもっとホットスナックに力を入れろ。(n回目)
短い簡単なルートばかりとはいえ、なんだかんだ登りまくった日だった。
取り組んだ回数で11回というのは最近ない数な気がする。
疲れて車の中で寝てしまった。
瑞浪屏風岩。
楽しい素敵な岩場だった。
楽しすぎて桜花賞の馬券を買い忘れたくらいだ。
まあ買う予定だったライトクオンタムもシンリョクカもラヴェルもキタウイングもすべて掲示板に乗っていなかったので、買っていたら外していただろう。
馬券の話はともかく、機会があればまた来たい。
その時はもうちょっとクラック技術を磨いておきたい。
おしまい。