- まえがき
- 出発、装備、天気
- さっそく逆走、いきなりの高巻き、懸垂下降、ハチの襲撃
- 再び高巻き、負傷者追加
- 再び滝、これも巻く
- いろいろアレコレ
- 最後の滝、ワサビ峠へ
- ワサビ峠、御殿山、下山
- 反省、振り返り
まえがき
先々週の週末は初めての沢登りを楽しんで、先週の週末は千石岩朝練を楽しんだ。
フリークライミングの朝練は楽しいが、入門したばかりの沢登りも忘れるわけにもいかない。
沢靴+沢用靴下の計12000円の分は楽しまないとな!という考え方は貧乏性すぎるが、正直まだ沢登りの魅力も難しさもわかっていない感じがある。
忘れた頃にやってもまた振り出しに戻るだけなので、早めに回数を重ねた方がいい。
ということで前回誘ってもらった仲間に再び声をかけて、沢の予定に参加させてもらうことにした。
今回行くのは比良山地、武奈ヶ岳の南を流れる明王谷にある沢の一つ、口ノ深谷。
坊村の駐車場に車を止めて、谷の入口まで林道を歩き、ワサビ峠まで抜けて御殿山まで上がって、坊村に下山するルート。
坊村から武奈ヶ岳は昔、数回登ったことがある。
とにかく序盤の急登がきつい印象があった。
風景も尾根に出るまでは杉林か葛川の谷、山間が見えるだけであまりパッとしない。
それ以降は武奈ヶ岳に行くときは琵琶湖側のイン谷口から登るようにしていたので、ご無沙汰だった。
先々週の鈴鹿山脈の尾高山からの下山ですら膝にくるものがあったので、今回はさらなるきつい下りとなると辛いだろうな、膝周りの筋肉鍛えなきゃ……などと考えつつも結局なにもしてなかった。そんな余力がない。
しかし、本当にキツいところは別にあった。
下山が核心とかないだろ。
やっぱり沢が核心なのだ。
出発、装備、天気
5時起き、6時半に集合、駐車場を出立したのは8時頃だったと思う。
坊村の駐車場はすでに混み合う気配があり、自分たちの同じように沢登りの準備をしているパーティーが何組もいた。
明王谷には白滝谷、奥ノ深谷、そして口ノ深谷と3つの沢がある。
一番人気は白滝谷だとか。自分たちと同じ口ノ深谷に入るパーティーもいるのかな?と思ったけれどいなかった。
口ノ深谷は沢登りのルートとしては2級というグレードらしい。というのはアプローチ中に知った。
このグレードシステムがちょっと厄介で、1級が簡単で4級が難しいという仕組みらしい。通常とは逆。なんでやねん。
ともかくどれくらいの沢がどれくらいのグレードなのか全くわからないので、あまり気にしていなかった。
今思えばもっと真剣に調査しておいたほうが良かったのかもしれない。
装備は前回と変わらず。
前回はギアをそれほど使わなかったのでむしろ減らしていった。
どうせ他の人も持っていくので、その都度貸し借りして行けばいいだろうと楽観視していた。
カラビナx4、安全環付きカラビナx3、スリングは60cmと120cmを1本ずつ。それから「持っていったら時短になるかな?」と思い、昔トップロープソロをやるために買った簡易アッセンダーのPETZLのタイブロックのみ。
この装備の緩さがダメだった。
後述するけれど、さらにチューブタイプのビレイデバイスを持っていくのを忘れていた。最悪である。
というか、前回の焼合谷でまともに出番がなかったのでたぶん今回もないだろ……とか思ってたせいかもしれない。
沢をナメすぎ。
天気は風が強く、上空では雲が早く流れているのが見えた。
午後からは曇りになるらしい。最高気温は猛暑日続きの日々とから少し低めの33℃。
比良にある沢はそれほど日差しが入らないらしい。
もしかすると寒いかもしれない……という話をしてたけれどそこまででもなかった。
しかし浸かって待機してると体が冷えるので停滞する時間はなるべく水から出るようにしていた。
さっそく逆走、いきなりの高巻き、懸垂下降、ハチの襲撃
林道にある橋を越えたところで入渓準備をして、川に降りた。
橋を渡って左側に踏み跡がある。
地図上ではほんの少し下れば口ノ深谷の分岐がある……ということで沢を下っていったのだけど下りすぎた。
途中で仲間が気づいたので助かった。これで15分ほどロス。
幸先よろしくない。
ようやく目的の沢に入っていく。
そしていくつか進むといきなりそこそこの滝が現れた。
遡行図と照らし合わせて、これは巻いたほうがいい滝なのかもしれない、右(沢では川の流れる方向からみて右左を表すらしい、遡上する場合は左岸になる、わかりにくい)から巻くらしい、ということを確認して右岸を高巻きしていくことにした。
……高すぎる。高巻きってこんなに上がるのかよ?
足元悪いしリスク高いなオイと思いながら踏み跡なのかそうなのかよくわからない部分を進んだ。
ようやくトラバースできる部分を見つけて移動、降りれるところはあるっぽいが……ロープ無しで降りるのは危なすぎる。
ロープを出してもらった。
ここで何気なくスリングで支点を作ろうとしてしまったけれど、懸垂下降の場合支点を回収できないから木に直接回す必要があったのを気づいてやり直したり。
始終こういうミスばかりだった。知識経験ともに足りていないことを実感せざるを得ない。
そしてチューブタイプのビレイデバイスを忘れているのに気づいたり。これはマジで大失態。
ムンターヒッチで下降するから、という仲間からデバイスを借りた。
懸垂下降をしたら30mロープでギリギリちょうどというくらいだった。
途中がハングしていて、これはロープなしでは下降できなかったな……。
後から下降してきた仲間が手を気にしていた。どうやら何か刺されたらしい。
アブだろうか。確かにそれっぽいのが下降前に周囲にいたような。
後続の仲間に合図をして彼が初めて使うというポイズンリムーバーを使うのを見て待っていたけれど他の仲間がなかなか降りてこない。
大声で呼ぶと「ハチが……」という声がかすかに聞こえた。
どうやら懸垂下降をした場所にハチの巣があり、それを刺激してしまったらしい。
さっきの刺され傷はハチのせいだったようだ。
ハチのせいで下降ポイントに近寄れず、さてどうするかと困っていたら少し左側からロープが垂れてきた。ハチの巣を避けて懸垂下降する場所を見つけたとか。
ただし30mではロープの長さが足りない。
最初に使ったロープを抜いて、それを下で連結して引っ張り上げて使ってもらうことにした。
ロープが2本あってマジで助かった。
今回参加していた仲間が所属している山岳会に登山計画を出したところ、「ロープは2本あったほうがいい」という指摘を受けて持ってきたものだった。
この2本のロープは代わる代わる出番があった。
なんとか高巻きで全員無事……いや、軽傷者1名で抜けることができたが、どうやら正しい巻き道は左側にあったっぽい。
そっちはそっちで枯れ葉も多くガレていて、登るのが難しそうにも見えたけれど、実態はわからない。
いきなりのトラブルでかなりの時間とメンタル体力などなど持っていかれた。
再び高巻き、負傷者追加
しばらくしてまた高い滝が現れた。
登攀の得意な仲間が近づいたけれど、ヌメヌメすぎて厳しそう、とのことで再び巻いて登る。
今回は左に踏み跡を見つけたのでこれだろうと巻き開始。
……いや、かなり悪くないか?
足元がボロボロで全然落ち着かない。手にした岩がすぐ抜け落ちそうな揺れ方をする。
先行していた仲間が岩に足をかけたところ、それが大きく欠けて落石が発生、それが下にいた仲間の肘に当たった。
幸い大事には至らなかったものの……当たりどころ次第では非常に危ないことになっていたかもしれない。
上でロープを出そうと準備していると仲間が登ってきてしまった。ここらへんの作業スピードが足りない。
負傷した仲間の肘は擦過傷と打撲のみだったようなので手当をしてから出発。
この時点で入渓してから2時間ほど経っていた。進捗としては沢の1/5以下。
ヤバいんじゃないか?という気持ちになった。
古い登山道と交じるところでお腹が空いたので昼飯休憩を申請して腰を下ろした。
自分は食べ物を荷物の奥にしまっているので簡単に取り出して食べられない。もうちょっとパッキングの工夫がいるかもしれないと思った。
3Lの耐水バッグがあるので、次に行くときはそれに食べ物だけ入れてみよう。
そこからしばらくは普通(?)な小滝、斜瀑が続いた。
なんと表現していいのかわからん。語彙力不足。
それよりもともかく、全体を通して倒木が多い。
気持ちよさそうな部分を素直に抜けることができずに迂回する必要があったりして、微妙なフラストレーションが溜まる。
蝿も多く、そのためか大きな蜘蛛の巣がそこら中にあった。
面倒。
唯一癒やされる生き物はところどころに佇んでいる蛙のみ。
再び滝、これも巻く
遡行図の載っていた本に「左から巻く」と書いてあった滝が現れたので、それに従って巻く。
これまで「巻く」と書いてない場所でも結構危なかったので、改めて記載されているということは相当だろ、と思って巻き道に取り付いたら案の定悪い。
足元も手元も悪い。
その上どこまで上がるのかわからない。
途中で「たぶんこれだろ」というところを見つけたがトラバースが危険そうでロープを出してもらった。
そのトラバース自体はそれほど難しくはなかったけれど、その先の木で確保をしてロープを結んでフィックス状態にして……などなど、まあ手間がかかるしスムーズにできない。
スキルの無さが致命的。
おまけに持ってきてるギアが足りないので、最後のビレイはムンターヒッチでやったり。
ムンターヒッチなんてクローブヒッチ作る際の間違いぐらいでしか作ったことがないぞ。
ビレイや懸垂下降のために使えるとは聞いてはいたものの、本当に使う日が来るとは思ってなかった。
沢登り、奥が深すぎる。
必要とされるスキルも多い。
ちゃんと予習復習をしておかないとヤバイな。
いろいろアレコレ
大きな滝は基本巻いた。
絶対使わないだろと思ってた簡易アッセンダーのタイブロックが役立つ日が来るとは思わなかった。
遡行図に記載されていたチョックストーンは、沢というか谷そのものにチョックしているサイズでビビった。
いろいろスケールがでかすぎて、心が飽和していく。
ここをくぐっていく。
奥に倒木が挟まっているのが見えた。これ通れるのか?と思ったけれど問題なく通れる。
シャワーを浴びながら抜けるようでなかなか面白い。
しかしこの倒木の量ならそのうち塞がるような気がする。
途中倒木に指をぶつけて、指と爪の間が裂けた上その間にぎっしり倒木の腐ったものが詰まって参った。
絶対これ後で膿んだり腫れたりするやつだろ……。
うんざり。
最後の滝、ワサビ峠へ
沢の最後を飾る、一番サイズの大きい滝。
これも右から巻く。
巻きばっかりだな。
そして巻きが一番危ない。それを心底感じる。
アッセンダーを着けて2番手で進んだ。
滝の抜け口に合流するあたりはほんの少し難しい。登攀に慣れていない人は辛いような。
どれも登攀自体は難しくないのだけれど、ロープワークや確保、その作業の丁寧さや速度が大切だったり。
落石の発生、足を滑らせるうっかりなどが怖い。
ここを抜けたところで15時となっていた。
ずいぶんと時間がかかった。体が冷えたので少しペースを上げて歩いたりした。
遡行図には「以降は平凡」と書いてあったらしく、平凡といってもどうせまた面倒なところが出てくるだろ、とか思ってたけど本当に平凡だった。
単なる河原が25分ほど続き、水量も減り、気づけば登山道に突き当たった。
ワサビ峠である。
ワサビ峠、御殿山、下山
ワサビ峠で沢靴を脱いで履き替えた。
前回は替えのズボンを持ってきておらず、履き替えた靴下と靴が濡れたけれど今回はちゃんと持ってきたので問題なし。
まあパンツは濡れたままだが……許容範囲。
夏の坊村~武奈ヶ岳への登山道というととにかく虫が多い、日差しが強い、風もない、みたいな印象があったけれど幸い曇りで風も強く、歩いていて快適だった。
武奈ヶ岳はガスっていた。
膝が致命的に痛くならないことを祈りながら、定期的に休みを入れつつ下山した。
案の定痛くなったけれど、まあなんとかなる程度。
これを解消するには日頃から走って足を鍛えるしかない。
やれやれ。
下山完了。
反省、振り返り
沢登り、ナメてた。
あと登攀用のギアあんまり使わないじゃんとか考えてたのは甘かった。ガッツリ使う。ロープもバンバン使う。
次このレベルの沢に行くときは120cmスリングをもう1本、それからもっと長いスリングも持っていく。安環カラビナも1枚追加しよう。
あと絶対にビレイデバイスを忘れない。
巻きルートの選択、手早い支点構築、ロープを手早く出す、まとめる、などなど足らないことだらけだった。
反省。
まあ、とにかく疲れた。
帰りの車内で爆睡してしまうほどに。
家に帰って休み休み後片付けをした。
沢靴を水洗いしたり、ザックやギアを洗濯したり。
爪に詰まった汚れは針でつついてもなかなか取れない上に痛いので、諦めてそのままメモAを塗り込んだ。
いつか出てくるだろ。膿まないことを祈るしかない。
眉毛の上あたりもアブかブヨかなにかに刺されていたらしく、ちょっと膨れている。
微妙な負傷が多くてうんざりする。
沢登りは充実はするが、楽しさというのはまだわかってない感がある。
難しさ辛さは実感した。
この夏シーズンにあと2回くらい行っておきたい。
ただこれ以上レベルを上げられると厳しいので口ノ深谷と同じ2級くらいの沢でいいかな。
3級はまだ無理。
次の沢はどこになるのやら。
おしまい。