まえがき
何度か日和佐の岩場に行ったことのあるから仲間が「日和佐の岩場に泊まりで行きたい」という提案、お誘いがあり、それに乗った。
海沿いですごくロケーションが良い、強傾斜のある岩場くらいしか知らなかったけれど、行けるチャンスがあるならどこでも行くぜ。
日程を相談して、天気も良さそうだったので2月の連休に行くことに決定。
参加者は3人。少し少ないので寂しいクライミングトリップになるかなとか思ったけど、そういうこともなかった。
というかちょうどよかった気がする。近所で集中的に登りこむなら偶数人のほうが回転が早くていいけど、遠征なら奇数人が都合がいい。
余った人が休んだり撮影したりできるので。
服装に悩む
何を着ていくか、持っていくかめちゃくちゃ悩んだ。
行ったことある人は皆「暖かいですよ」「真冬だけど半袖でいいかも」などという。
だがドーム内は日が当たらず、風も強い時は寒いという記事もあった。
よくわからん……。
自分は寒がりなので厚めの服を持っていくことにした。
ワークマンの化繊・綿混交の長袖をベースに、その上にmont-bellのジオラインのサーマルジャケット。ズボンはmont-bellのクリフパンツサーマル。
靴下はワークマンのメリノウール60%の長ソックス。薄手のフリース、それからダウンジャケットを持っていった。
結局自分はこの着こなしで正解だった。
mont-bell+ワークマンのコスパスタイル。
日が当たるところは熱いけれど、ドーム内の日の当たらないところは寒いし、基本的に風が通るので寒い。
熱い時は長袖を腕まくりして使い、寒い時はサーマルジャケットを着て登る。ビレイ中はダウンジャケットを着る。
アプローチ中はフリースを羽織ればOKだった。
この遠征前にアプローチシューズ(SCARPAのクラックス)のソールが剥がれ始めていたし、かかとを踏んでもう使い心地が良くなかったので新しくアプローチシューズを買った。
mont-bellのクラッグホッパー。
色やデザインはともかく、アプローチシューズの性能としてはピカ一と評判らしい。
足型は日本人向きで幅広。足が細めな自分にとってはちょっと余る感じだけど、紐で縛れるしクライミングで足がむくんだときにはありがたいかもしれない。
確かに岩場、ザレ場、葉っぱの上などでもフリクションが良かった気がする。
末永く使いたいぜ。
いざ日和佐へ
3日間あるので焦ることなく朝6時頃に自宅から出発。
淡路島を通り、鳴門海峡を超えて四国入り。
そのまま車を南に走らせて、駐車場に着いたのは11時前。
今日は簡単なルートを登って岩場を知る、偵察クライミングだなと思ってアプローチを開始した。
アプローチについて
アプローチはわかりにくいというのを聞いたことがあるけれど、それほどでもなかった。
展望台まで歩いてから、その左に続く、やや道の悪いトラバースルートを行く。
おそらくクライマーよりも釣り人のほうが多く通っているのかもしれない。
岩に足場となる鉄杭がいくつも打ってある。こういうアプローチの整え方は初めて見たな。
ツルツルしていて滑りそうで少し怖い。慎重に進む。
岬の見晴らしの良い所まで来て、「ドームってどこだよ」って迷うのだと思う。
確かにドームの入り口がわかりにくい、というか見えない。
こんな感じで隙間にあるので見えるわけがないのだ。
これがドームの入り口。狭くてちょっと危ない。
仲間は「こっちのほうがいいんですよ」とドームの上を歩いて、下降路のほうを案内してくれたけれどこっちのほうがより危ないし疲れる。
結局そこを使ったのは一回きりで、それ以降はドームから出入りした。
コンディションとか
昼間、ひだまりエリアに着いたときに口にしたのは「ヤバイ、暑い」だった。
日差しがガンガン照りつけて暑い!太平洋の熱線が服を貫通してくる。日焼け止めも欲しい。
これは服装ミスったかもしれんとか思ったけれど、日の当たりまくるひだまりエリアで登るのは基本朝一のみだったので服装は正解だった。
ドームは東南向きに開いており、朝が一番日差しが入り、午後になるに連れて日差しが逃げていく。
そして午後になるに連れて風が強くなり、寒くなった。
これがいつものことなのかはわからないけれど、自分がいた2月頭の3日間はその傾向は変わらなかった。
ドームの右端のルートなら朝にやるのがいいのかもしれない。
というかドーム内のコンディションは午前中が一番良く、午後は寒い。
ビレイ中はダウンジャケットが欲しいし、長靴下も欲しい。
自分が行った時の天気予報の気温は12~14℃くらいだったけれど、ドーム内も概ねその気温だった。体感気温、快適さは風が左右する。
潮位も調べていったけど、満潮になるとドーム左端のルート取り付きは波が飛んでくる。
波がどれくらい高く来るかは風や気圧次第なのかもしれない。
自分がいた時はそれほどきつくなく、基本的にいつでも登ることができたような。
この日は自分たち3人と別の4人パーティーがいて計7人。少なかった。
過去に何度か来ていた仲間いわく、10人くらいはいてクイックドローはかかりっぱなしで借り放題、みたいな話だったけど少し様子が違う。
たまたまなのか、蝙蝠谷の岩場などが開放されて人の流れが変わったのか。
よくわからない。
ルートについて
検索をかけるといくつかのルートが崩壊したとか、ボルトが抜けたとかの記事がヒットする。
潮風の影響で風化が早いせいなのか、それとも岩質の問題なのか。
登ってる最中もどこかがポロッと欠けて落ちることが度々あった。
終了点には残置カラビナが基本的にない。海辺で劣化が早いため、残置はなるべく減らしているのかもしれない。
そのため結び替えによる回収処理は必須技術となる。
何回か整備が入っているのか、100岩のトポに記載されているボルト数と一致しないことがある。
基本的に少なくなっているような。
100岩に載っていない新規ルートもいくつかある。
潮騒エクスタシー 5.10b
まずはひだまりエリアで簡単なものを登ろう、ということで最初に選んだがこれだった。
右にトラバースしていく、長めなルート。
基本ガバで大きく体をつかうところがあったりでなかなか爽快感がある。★★なのも納得かな。
100岩のトポには抜けが核心とあるけれど、どちらかというとトラバースゆえの振られ落ちのほうが怖い感じ。
完登。
終了点は岩の上にあり、長めのスリングで伸ばさないとロープが岩に擦れる。
結び替えをして降りるとロープが痛むし流れも悪いしで、終了点は上に回って歩いて回収した方がいいと思う。
回収時は振られに注意。
ここでトップロープをしていて右側に大きく振られて、怪我をした人がいたみたいだった。
自分も気をつけたい。
岬めぐり 5.12b(?)
ひだまりエリアはとりあえず十分、メインであるドームの中に行こうということでそちらに行った。
自分のこの遠征の目当ては岬めぐり 5.12b。
自分がRPしたことのないグレードだけれど、色んな人から聞いたところ、明らかに簡単らしい。
実際は5.11cくらいだとか。
5.11cというと、芹谷屏風岩のムササビ小僧とか、コアラのマーチとかと同じか。
……コアラのマーチはめちゃくちゃ苦労した。それくらいの難しさと同じと考えるなら2日は欲しい。
通っているko-wallリードジムの5.11cとかだと嫌がらせのような難しさの課題ばかりで、ともかくあまりすぐ登れる印象のないグレードなのだ。
とりあえずムーブを解決するところから……と思ってルートの様子を伺ったら、別のパーティーがちょうどクイックドローを回収するところだった。
その最中に回収用のカラビナに自分側のロープを通し忘れて、そのせいで大きく振られ落ちてしまったり。
そのショックでなのか、結び替えをした後の結び目を残したままロープを引っ張って、ロープをスタックさせてしまっていた。
あらら……。
そのパーティーは少し休んだら回収しますとドームから出ていった。
うーん。★★なラビリンス 5.10dあたりをやるか?あるいは★なパピヨン 5.11bあたりでもいいかも。
とか思ったけど目当てのルートを早めに触らないのはもったいないので回収を申し出て登ることにした。
どうせオンサイトは厳しいのだ。探りに行くなら特に邪魔にもならないはず。
1本目
下部はガバガバ。おいおいこんなにガバガバなんかよ!とか思っていったら微妙なポケットが出てきて詰まった。
その上にもチョークの付いたホールドがあるけど、あまり良くない。
どうやらそこらへんをごにょごにょしつつ右にあるアンダーホールドを取りに行くらしい。
でもそれを軽く触った感じだとあまりホールド感が良くなさそう。
そしてそこを保持してか、もう少し進まないとドローが掛けられない。掛けられないと結構落ちる。
うぬぬ。ポケット保持辛い。悩んでテンションを掛けた。
すぐ先の回収用残置カラビナにロープが掛かっていて邪魔とか、そういうわけでもない。
落ち着いてポケットホールドを探ったら指のいれ方、向き次第でかなりよくなることがわかった。
そして悪いと思っていたアンダーも足を上げればそんなに悪くない。ひと作業できるくらいに。
ちなみにここのクリップはマスターでなければ普通に下のガバから届く。自分がマスターでやった後の仲間のムーブを見て唖然とした。
そういうこともあって、少し長めのドローを使っておくと良い。
その後のムーブにも迷った。
遠いガバ取りだけれどガストンがいいのか、クロスで取りに行くのか。
結局足上げしてガストンを効かせるのが一番と判明。
上部はガバガバ。ヨレなければ問題なし。
上で引っかかっていたロープを落とし、ロワーダウン時に再度ムーブを確認して降りた。
ふむ。これは次でかなりの可能性あるな?
2本目
長めのレストを取った後、構築したムーブをミス無く繰り出して完登。
嘘。核心を抜けた後微妙に足に迷った。でもそれくらい。
この遠征の目当てのルートが1日目で終わってしまった。もっと苦労するものが登りたかったところある。
5.12b完登、RPグレード更新だ!とはまあ喜びにくい。
核心部の数手のシーケンスが難しいだけで、すごく取り組みやすい。核心の練習もしやすいし。
下部上部がガバでグイグイ行けるので、実質的な手数は少ない印象になる。
強傾斜を登っている!という実感が強いのでなかなか楽しい。
5.11台強傾斜入門としてオススメな感じがした。
自分が2回で登れたってことは、個人的には5.11b/cくらいじゃないのとか思ったけど、これは自分が強くなってるからなのか区別がつかない。
5.11cだと芹谷のコアラのマーチとジムのルートが難しすぎる印象が強いんだよぉ!
グレードヨクワカラナイ。
パピヨン 5.11b
少し時間が余ったし、体力も余っていたのでドーム右端にあるパピヨン 5.11bというルートに取り組んでみることにした。
意外と長い。クラック沿いに登る。途中にハングがある。上部が下から見てもよくわからない。
トポには「ハング一撃はすごい、ジャミングもできたほうがいい」みたいなことが書いてある。できたほうがいい、ということはできなくても登れるってニュアンスだろうか。
とりあえずジャミンググローブを付けて登ることにした。
これまた取り付きが離れていて怖い。
下部はガバスラブなのでスイスイと行ける。左隣りにあるラビリンス 5.10dの終了点あたりにたどり着いてからが本番開始って感じか。
そこから立ってハングにクリップする体勢を作るのがほんの少し難しい。奥に入りすぎるとハングの下から出にくくなるのだ。
ハングの抜けムーブ自体は意外とホールドがよく、足も上げやすくてそれほど難しくない。
核心はその後のクラック。
こいつが手が逆になったり、しっかり持つのが難しかったりで苦労する。
ジャミングが上手いならサクッとこなせるのかもしれない。自分はその下部をジャミングでしっかり休み、そして左手を出して重心を動かして効かせるようにして体を上げた。
上まで上がらないとドローは掛けられず、そこら辺で落ちるとそこそこの距離落ちる。
怖さを感じると動けなくなっただろうと思う。たぶんその前の岬めぐり完登で調子がついていたのか。
その時はちょうど通り雨が降っており、最後のリップを掴んだときにヌルっと滑ってビビった。でも落ち着いて対処。
マスターでオンサイトできた。よし。
ここも残置カラビナはないので、雨に降られながら結び替えを行い、降りた。
宿へ
17時頃に岩場を離れて、宿へ。
宿泊場所は仲間が昔泊まったという「樹園」という宿。
岩場まで20分ほどかかるけどそこまで遠い感覚はない。
おとなしい老犬が可愛い。猫でなくてよかった。猫アレルギーなのだ。
部屋にはこたつがあって嬉しい。洗面台もあるのも助かる。アメニティもしっかり揃っていた。
佐々木倫子の動物のお医者さんが置いてあるのはポイント高いな!
……風呂のシャワーヘッドが壊れており、全然お湯が出ないのはマイナスポイントだけど、それ以外は快適な宿だった。
魚料理が山ほど出る。お腹いっぱいになる。
明日は何を登ろうか、そんなことは特に決めずに出発時刻だけ決めて23時頃に眠りについた。
2日目に続く。